男女共同参画・ダイバーシティ

通称使用に関する男女共同参画の観点からの検討必要性について

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男女共同参画会議・重点方針専門調査会での意見

昨年12月に閣議決定した第4次男女共同参画基本計画に基づき、3月15日の男女共同参画会議で二つの専門調査会が設置され、このうち私は男女共同参画会議の議員として重点方針専門調査会に参加することになりました。先般、第1回の重点方針専門調査会が開かれ、その際に意見を申し上げてきましたのでその全文を公表します。(なお、別途議事録も公開される予定です)

昨年12月の閣議決定の直前には、いわゆる再婚禁止期間と夫婦別姓に関する二つの最高裁判決がありました。とくにこの夫婦別姓を認めていない民法の規定について等が争われた裁判については、選択的夫婦別氏の判断をスコープとはしていないものの、制度への言及があり、国会での議論が求められています。(なお、メディアの記事はどうしてもサマライズされてしまうことから、関心のある方にはぜひとも最高裁の判決文の全文をお読みいただくことをおすすめします。)

私自身としては第2次男女共同参画基本計画の段階からかかわってきた中、いわゆる民法750条の改正については内外での議論は尽くされたとの立場である一方、同法改正の「手前」段階として通称使用の進展をみるべく、以下のような意見をまとめたところです。

意見の本文

通称使用に関する男女共同参画の観点からの検討必要性について
1.議論の背景

  • 選択的夫婦別氏制度に関わる様々な議論(平成8年法制審議会答申、平成22年第3次男女共同参画基本計画等)について国会における議論の進展が見えない中、時々刻々と変化する社会・経済状況を踏まえ、現時点における旧姓などの通称使用に関する課題を明らかにする必要性がある。
  • 司法は「夫婦同氏制が、婚姻前の氏を通称として使用することまでを許さないというものではない」(※1)との意見の一方、通称使用が広まることによって一定程度は夫婦同氏制による「不利益が緩和され得るものである」(同)とする。
  • しかしながら、ビジネス・学術分野に限らず、スポーツ・地域社会等の分野においても、通称使用が一般化し得る状況にあるとは言い難い。
  • 第4次男女共同参画基本計画においては、社会制度・慣行に関し、「民法改正等に関し、司法の判断も踏まえ、検討を進める。」(第9分野)としたが、一方で司法は選択的夫婦別氏制度について「この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」(同)としており、議論の終着点が見出せない状況にある。
  • 「婚姻前に営業成績を積み上げた者が婚姻後の氏に変更したことによって外観上その実績による評価を受けることができないおそれがあり、また、婚姻前に特許を取得した者と婚姻後に特許を取得した者とが同一人と認識されないおそれがあり、あるいは論文の連続性が認められないおそれがある等、それが業績、実績、成果などの法的利益に影響を与えかねない状況となることは容易に推察できるところである。」(※2)との意見には男女共同参画社会への強いメッセージが含まれていると捉えており、女性活躍加速において重点的な論点であると考える。

2.現時点での検討の必要性

  • 前項および2016年3月の女性差別撤廃委員会からの最終見解(※3)も踏まえ、選択的夫婦別氏・旧姓などの通称使用に関わる課題調査を早期に推し進めるべきであると考える。また、かかる課題への取組が第4次基本計画下において何らかのかたちで進展するべく、意見を発する必要性がある。

※1: 最高裁平成26年(オ)第1023号同27年12月16日大法廷判決多数意見より一部抜粋
※2: 同岡部喜代子裁判官の意見より抜粋
※3: CEDAW/C/JPN/CO/7-8

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