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「全ての人はセンサーに、アクチュエーターになった」- Mobikeと大連で出会った話

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サマーダボス参加のため大連へ

大連で開催されていたサマーダボスに参加してきました。World Economic Forum(世界経済会議)の主催で、冬のダボス会議はスイスのダボス、夏は天津と大連で隔年で交互に開催されています。計3日間、普段接しないテーマにも積極的に関わってみました。

大連はクララオンラインが2006年に中国に初めてランディングした地であり、その時のなんとも言えぬ苦しかった記憶が色々と思い出されます。ただ、あの時代があったからこそ中国の仕事を続けられています。ありがとう大連。ちなみに当時の夏徳仁市長に会場でお会いしました。

大連にシェアバイク

ところでいきなり話は変わりますが、いま中国中に普及しているシェアバイク(乗り捨てOKの自転車)、実は大連には存在していませんでした。二級都市どころか三級都市にまで各社が面を取りにいっています。Mobikeは500万台以上を中国で投下しています。今までの中国での年間の生産量はどれぐらいだったんでしょう。。いずれにしても、隣の旅順にはあったものの、この規模の都市にしては珍しく大連は空白地帯でした。

その大連に、どうやらサマーダボスにあわせてか、いまから4日前、Mobikeとofoの上位2社が自転車を「投下」したのです。しかもごく僅かな台数。私は大連に着いた一昨日の時点ではこの話を知らず、空港からの道で、ofoの黄色い自転車を一台だけ見つけ、「あれ、なぜここにあるんだ」と思ったわけですが、どうせ誰かが遠くから持ってきたんだろうぐらいにしか感じなかったわけです。

ところが微博(Weibo)を見ていると大連人がMobikeやofoを見つけている投稿が。おおっと思い、初日の夜にパーティを終えてその足で宿のまわりを探します。Mobikeは自転車に内蔵されているGPSと通信機器で位置情報をアプリ上に示してくれるのですが、大連全体でも空いているのは数台。ofoに至ってはそもそも位置情報が大連の中で見つかりません(結局、今日に至るまで一台もofoは表示されませんでした)。

なかなか出会えぬ

初日にようやくの思いで見つけたMobikeは、タッチの差で別の人に乗られてしまい(Mobikeは予約を15分間だけ出来るのですが、探している間に予約が切れ、次の予約をいれる間に次の人にとられてしまいました)残念。もう一台を見つけに歩きましたが、GPSで示される位置にはありませんでした。

そして次の日。セッションの合間に中山広場方面にタクシーで移動し、その車中からofoを一台見つけました。「やったー」と興奮してタクシーを降り、まずは写真を撮って、と興奮したわけです。個人的にはofoの「黄色のデザイン」がすきなのです。さぁ、と解錠して漕ごうとしたら、スカッと。ほんと、スカッと。

なんだと思ったら、チェーンがない!!! ofo。。。悲しいofo。。。この時点でこの自転車は大連に投下されてから僅か2日の命だったわけです。悲しすぎました。

出会えたMobike。

そしてその夜。つまり昨日(6月30日)。もう諦めきれません。夜はパーティとイベントを4つ駆け足で回ったあと、アプリでMobikeの位置を探します。宿の近くにMobikeが2台いそうなのは分かりました。しかし、明らかに位置情報が「建物の中」。とはいえ位置情報がズレているのかもと思い行ってみましたが、どうも本当に「建物の中」に持っていかれてしまっていたようです。(周辺をそれぞれ二周しました...)

それでも諦められぬ私。なぜにここまで捜し求めるのかは私も良く分かりません。アプリで次に近い自転車を探すと、労働公園の中。公園の中。。。公園といっても中国の「公園」はデカイわけです。大連をご存知の方であれば規模がわかると思いますが、そこそこの広さです。タクシーに乗って労働公園を目指してもらい(夜もそこそこの時間なのでタクシーの運転手さんからは怪しさ満点。外国人が一人夜遅くに公園に行くってね...)、着く直前あたりで予約いれ、他の人に取られないようにブロックします。心の中では「誰だよ労働公園のど真ん中に置いたのは!」と叫んでいるわけですが、ここで会えなければ叶わぬ恋だと思い諦めようとも覚悟します。

そ、し、て。

出会えました! Mobike in Dalian!

Mobikeは駆動がチェーン式ではないので上にあるようなofoのようにチェーンがとられている心配もありません。予約しているとサドル下のLEDが青く光っており、まさにワタクシを待っていただいておりました。ありがとう、君に会いたかった。。

ルンルンで走ります。自分でも何が嬉しいのかもはやわかりません。一方で大連は坂道が多いので、そこそこ良い運動です。

ま、ここから先はどうでもいいのですが、満州時代の旧ヤマトホテルの前まで走り、記念に一枚。十分にこれで満足したので、邪魔にならなさそうなところまで移動し、気持ちよく乗り捨て参りました。

センサーであり、アクチュエーターに

さて、冒頭にこの見出しを書きました。私の言葉ではなく、サマーダボスの金融のセッションに参加したときに登壇者の一人が言った言葉です。シェアバイクに紐づけた話ではありませんでしたが、FinTechの流れで「全ての人はセンサーになった。アクチュエーターになった。」という表現をされました。センサー化という表現まではIoTでは当たり前に言われていることで理解していたつもりです。ただ、アクチュエーターでもあるということに衝撃を受けました。

シェアバイクはまさにセンサーです。自転車を使っているように見えますが、一方で人の流れが極めて広範囲に捕捉できています。何せ中国ではMobikeだけで一日2500万利用、ofoも1000万利用を超えています。一日あたりです。今まで携帯電話単位の位置情報は通信事業者(キャリア)は持っていますが、それをどう使うか/使えるかについては積極的なものは見当たりません。ところがシェアバイクユーザは、解錠してから施錠するまでの利用中、スマホの位置情報がずっと飛んでいます。誰がいつどこへ、というよりも、もっと俯瞰的に見て人はどの時間帯にどう移動しているのかがデータ化できているわけです。実際Mobikeは北京の行政機関などと共にこの研究を始めているとも聞きます。

一方、エネルギーが物理的運動になるという意味で、まさにアクチュエーターでもあるとの指摘はまさにシェアバイクのビジネスにも的確に当てはまります。人のセンサー化、アクチュエーター化は、まったく新しい世界が見えるとの可能性を強く感じました。余談ですが、3日間、ひたすら様々なセッションと聞きましたが、ITやコンテンツのセッションよりも総じてこの金融のセッションがもっとも刺激的でした。

日本にMobikeが来るとの報道

先日、Mobikeが福岡と札幌で準備を始めているという発表がありました。素晴らしいことです。中国で出始めた頃に「どうすれば日本でこれが出来るか」といろんな人に議論を持ちかけました。しかし放置自転車や、そもそも自転車が車道を走るマナーなどの日本での状況を考えると容易ではないので、やるなら地方だねという結論だったわけです。東京は坂も多いし(以前の記事にあるように上海には電動アシストもあります)。

日本で中国ほどの台数を投下するつもりは今のところなさそうですが、大手スーパーで1万円前後で売られているママチャリが、買ってしばらくしたら盗まれたり、放置自転車置き場に山積みになるより(我が家の半径1キロには大きな置き場が2つもあり、いつも一杯。)、私はずっとこういったサービスの方が合理的だという考え方です。1万円ぐらいだと盗まれても仕方ないと思ってしまう感覚もありそうです。我が家には電動アシストが2台ありますが、家-どこか、という移動でなく、出先での移動であれば大いに使うでしょう。初乗りを値下げしたかに見えて決して安くなっていないタクシーよりも。

本当はものすごくこのビジネスを中国から日本に持ち込んでみたかったというのが本音です。今でも何か手伝いたい。やや感傷的になっている節もありますが、登場して1年と少しの間、とにかく外国人が乗れるサービスは乗りまくってきました。中国の社会がここまで一年で変わる姿を見て、日本では感じられないパワーを味わっています。さぁ、私もまた今回の大連でエネルギーをもらいました。アクチュエーターというヒントをもらって、また明日からカラダと頭をきちんと動かしてみます。

そうそう、ちょっと気になっているところとしては、改正測絵法(測量法)が7月1日に施行されるわけですが、年々厳しくなる地図まわり。個人のスマホは除外としても、Mobikeに搭載されているGPSはどのような扱いなのでしょう。

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