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カンボジアに和牛を輸出している地域(税関)はどこか

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カンボジアに和牛を輸出している地域

日本の冷凍和牛の輸出先第1位が5年連続カンボジアであるわけですが、2017年も順調にその傾向がみられます。さて、その冷凍和牛は日本のどの地域から輸出されているものが多いのでしょう。ということで、貿易統計で楽しく調べてみることにしました。

なお、なぜカンボジアが冷凍和牛の輸出先第1位なのかについてはこのblogでは触れません。検索すると答えと方法がたくさん見つかりますのでご参照ください。上海に行くと美味しい和牛(オーストラリア産のWagyuではありません)が食べられますが、中国は日本から2001年以降輸入はしていないことになっています。

わが国の税関の管轄は9つに分かれている

東京税関、横浜税関、といったように、日本の税関は9つのエリアで管轄が分かれています。このうち東京税関の管内には羽田空港や成田空港の支署などがある東京エリアだけでなく、やや離れた場所としては新潟も範囲に入っています。

今回の目的は、9つの税関の管轄のうち、いったいどこの税関を通じて「カンボジアの人がほぼ食べているわけではないと分かっているのに冷凍和牛が輸出されているのか」を知りたいというものです。厳密には税関と輸出する者の位置関係に正確な意味はありませんが、どこに輸出するためのものが集まってきているかは分かります。さすがに、例えば九州の牛をわざわざ横浜まで運んで輸出することが多いとは考えにくいためです。

なお門司税関では「和牛輸出第一位ワーイ」(注:筆者に聞こえた声)という特集が昨年12月に出されています。畜産王国九州です。胸を張っていただいてよいと思います。なんといっても日本のほぼ半分の牛肉は門司税関管内から輸出されているからです。そして、冷凍和牛ではなく冷蔵和牛にカンボジアルートはありません。概ね仕向地が本当のfinal destinationだと考えてよいはずです。香港やアメリカで美味しく食していただいているものと思います。
牛肉の輸出 - 門司税関の 2015 年輸出数量、金額過去最高 -シェア全国第1位

冷凍和牛とカンボジアに絞る

しかし門司税関の上のPDFは冷凍和牛と冷蔵和牛を分けていません。ここでは肉製品の貿易に係られている方であればお分かりいただけるだろうと思いますが、0201と0202の合算をされています。カンボジアに行っているのは冷凍品です。冷蔵品はさすがにドンブラコとタイに渡ってさらに中国に行くということはありませんし、あったとしても私は申し訳ありませんが食べません。

ということで、0202と、120、つまりカンボジアの組み合わせを調べたくなったわけです。なお120はカンボジアの国コードです。

実際には検索機能を使いますが、このようにCSVデータから確認することもできます。

貿易統計のCSV

貿易統計のCSVとニラメッコ。

まずは今年の状況を確認する

それでは、冷凍和牛の2017年度の状況について確認しましょう。

ちょうど6月度までは確定も出てきており第一四半期の状況がわかります。よしよし、今年度も出だしからカンボジアルートが好調だぞ(謎)、とわかります。金額ベースで見るとこれを単純に4倍すると昨年度を超しそうです。普段ならばきれいに整形するのですがExcelからのキャプチャだとモロワカリの手抜き具合、お許しください。

冷凍和牛の輸出金額と主要相手国。カンボジアが引き続き1位です

冷凍和牛の輸出金額と主要相手国。カンボジアが引き続き1位です

どの手段で輸出されているのか

貿易統計では「航空貨物」「海上コンテナ貨物」のいずれで輸出されているかが分かります。運送形態別といいます。ただし、郵便や海上バラ積み貨物で輸出されているものについては検索できませんので、まれに総額と合わない品物に出くわすことがあります。ま、牛肉でこれに出くわすことはありません。

貿易統計検索ページ
運送形態別品別国別表

結論はあまりにも簡単ですが、海上コンテナ貨物でしか輸出されていませんでした(過去の統計をさかのぼっても)。これは、カンボジアに日本からの直接の航空貨物便が飛んでいないからということではなく、経由や積み替えであってもいいわけですが、そもそも船でしか運ばれていないということになります。

運送形態別の冷凍和牛の輸出状況(2017年1-6月)

海上コンテナ輸送による冷凍和牛の輸出状況(2017年1-6月)

いよいよ税関別の状況に。

それでは、本日のお題である「カンボジアにはどの税関から和牛が輸出されているのか」を調べましょう。玄人さん向けにはCSVデータを使う方法もありますが、ここでは初心者コースということで検索ページを使います。既に品目コードが0202から始まることがわかっています。カンボジアは120ですね。

なお、0202が冷凍牛肉だよねというような輸出統計品目表については 財務省 輸出統計品目表
を使っても便利ではありますが、私は日本関税協会が提供されているweb輸出統計品目表をブックマークしています。

それでは検索しましょう。税関別で複数の月にまたがって検索する場合には「税関別品別国別表」ですが、税関別・国別・品目別で検索する場合には「統計品別国別税関一覧表」を用います。ここでは後者の「統計品別国別税関一覧表」で検索した結果を表示しました。

結果は、第1位が横浜。単価が高いのは神戸

引っ張りましたが、ようやく結果です。2017年度第一四半期(4-6月)の状況は以下のとおりです。

2017年4-6月度のカンボジアへの冷凍和牛輸出の状況
第1位横浜本関、第2位門司の下関税関支署、第3位同じく門司の博多税関支署、最後に神戸。なお2017年1-3月を絞るとと東京からわずかに輸出されていましたが4月以降の実績はゼロです。

ここまでくると、どの地域のお肉なのかが分かる気がしますが、神戸は本当に少なそうです。ただ、量が少ないのも起因しているでしょうが、1キログラムあたりの単価は神戸がトップ。高いお肉なんでしょう。参考までに、2016年1月から12月においても第1位横浜(192トン)、第2位下関(122トン)、第3位博多(36トン)は変わりませんでした。

また、2016年までは統計で冷凍和牛について枝肉・半丸枝肉以外のかた、うで、もも、など骨付きでない肉とが区別はされていませんでした。今年からはこれらが区別されていますが、その中でも輸出量の大半は枝肉・半丸枝肉が占めています。仮にすべてが枝肉だったとするとおよそ400-500キログラム程度。ここから脱骨などをしていくと半分ぐらいになります。どこかの記事で枝肉の単価で計算していた人がいましたが、グラムあたりの比較をするならば枝肉で割り算しないほうがいいと思います。

仕向地は「最終目的地」のはず

最後に、牛肉を大事に育て出荷されている皆さんや、本当にカンボジアの中で流通させるために尽力されていらっしゃる方の努力は十二分に理解しています。私個人としては、ここまで実状は奥深いものがあるのに、長期にわたって迂回ルートが取られている現状は好ましくないものと考えています。中国が一日も早く日本からの牛肉輸入を解禁してくれることを期待しています。

仕向地というのは「輸出貨物がその取引において最終的に仕向けられる国」です。いいですか。最終的に、です。それでは、カンボジアの人が本当にたくさん和牛を食べて頂ける日が早く来ること、および冷凍和牛の統計に「105番」(中華人民共和国)がまた出てくる日が早く来ることを期待して、本日はこのあたりで。書いててお腹減りました。

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