Paralympics

リオのパラリンピック視察を終えて

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リオのパラリンピック視察から帰ってきました。今回は子会社のスポーツITソリューションの社長と同行し、13日に入り14日の朝から連日複数の競技会場をまわり、19日の閉会式の最後まで細かく見ることができました。まずは健闘した日本代表チーム、関係者の皆さん本当にお疲れ様でした。ここでは視察を終えたところで忘れないようにしておきたいことをメモ的に残すことにします。

観客動員

後半になるにつれて明らかに各競技会場には観客が増えていきました。ご存知のとおり過去2番目のチケットの販売となったわけですが、実際にチケットは最後3-4日はほぼsold out。売れただけでなく会場の入りも相当でした。

一部では Transformaのプロジェクトなどを通じて学校などの動員もあったようですが、少なくとも最後の2日ぐらいはその比率も少なかったように思います。移動を見ていると家族連れ、カップルが多くいました。

アクセシビリティ

まずかなり集約性は高かったと思います。実質的にはバッハ(Barra)地区のオリンピックパークに多くの競技があつまり、これ以外にマラカナンスタジアム、オリンピックスタジアム(陸上)、マラソンやビーチバレーはコパガバーナ海岸など、でした。

Centralやコパガバーナ方面からオリンピックパークへは地下鉄1号線の先に、オリンピック会期直前に出来た4号線(チケットがないとのれない仕組みはパラ期間中も同じでした)、そしてその先に機能するBRT(専用レーンを走るバス)が機能していました。オリンピック期間中はわかりませんが、パラ期間中は混雑はするものの比較的順調にまわっていたように思います。

東京は会場がかなり分散することが予想されていますが、外国人にとっては慣れない土地での慣れない交通手段での移動はかなり大変なもの。その点、市街地から距離は離れていてもリオの集約性は悪くはありませんでした。

地下鉄の駅は従前からの駅はエレベータがない駅も多く、階段脇につけるリフトでの対応。実際には電動以外の人ではエスカレータに介助者と一緒にのっている人も多くみました。(私もよくやっていました)

BRT

そのBRT。かなりの広範囲をカバーする路線があり既に市民の一般的な足になっているようでしたが、鉄道をひくほどでもないが、またはコスト面でひけないが、一般的なバスよりも高速かつ定時運行に繋がるという移動手段としては○という印象です。急行運転と各停運転を組み合わせていて、各BRTのバス停で抜くことができるようになっていました。無理に鉄道をつくらず(つくれず?)BRTをきちんと整備した上での成功例ではないかと思います。

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一点気づいたことは、名古屋のように高架にしているわけではないため、専用レーンを少なくとも片側1車線ずつ確保しようとするとそれ以外の一般用レーンで2車線としても、合計6車線は必要になります。その道幅を既存の道路で作ることは通常難しいと思われ、都市計画の中に当初から組み込まれるなどの必要がありそうです。

また、BRTといっても高架ではないために信号の影響は受けます。この点は高架専用レーンを作るかどうかとのトレードオフになりそうです。

地下鉄

1・2号線のCentralよりコパガバーナ寄りでは雰囲気は悪いとは感じませんでした。そこより外側はちょっと雰囲気が変わった気がします。Centralの駅を上がったところの昼間の雰囲気だけは明らかに薬物系かなという人が何人もみられたりて少しよくありませんでしたが、私の個人的な印象ですが、中央駅って何となく雰囲気よくない国もあり、こんな感じかな、とも。

ボランティアスタッフは駅に数名ずつどこでも見られ、何度か尋ねて見ましだか丁寧でした。Rio Cardと呼ばれる交通カード以外に期間中はオリンピックカードという1日、3日、7日の乗り放題券が売られていました。毎日行くならばお得。オリンピックのエンブレムが入っていてお土産・記念になります。いずれも非接触型のカード。均一料金制です。

閉会式の日、大雨がふって混乱したせいもありますが、帰りの時間帯になるとマラカナンの地下鉄の駅が無料開放されていました。(ポルトガル語で「あれ、無料で通れるといってる?」と思い半信半疑でしたが誰も支払っておらず)

クレジットカード

会場内はスポンサーであるVISAのみですが、ブラジル在住の人たちはデビットで利用している人が多い印象をうけました。都度オーソリとりにいっているスピード感なので少し待ちますが便利ではあります。街中でもほぼクレジットカードのインフラは整っています。

セキュリティ

会場はゲート前でX線検査と金属探知機。あとは会場内・市内の道路・駅など至るところに警備に軍や警察。という組み合わせ。閉会式だけはマラカナンの地下鉄を降りたところで持ち物のかばんをあけるチェックを重ねていましたが、経路によってはそもそもそこを通らなくても行けました。

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X線検査はきっちりとみていました。なぜって? 私のかばんに入っていたセルフィーの棒、かなり小型で、折りたたみ式でもあるのでぱっとみてセルフィーに見えないはずなのですが、見つかりました。。(持ち込み禁止なのを忘れていて、かばんに入っていた..) よく見つけたね!と思ってある意味感心して気持ちよく捨てました。身体用の金属探知機はどこでも感度レベルは下げていたように思います。カラビナぐらいでは反応しませんでした。

主なテロ対策は軍や警察の警備が中心だったようです。ドローンが上がっているなどのような特別なものは見られませんでした。街中にゴミ箱はたくさんありますし(もともとのようです)、さして過敏すぎるテロ対策は感じません。結果として何もなかったものの、狙われるリスクのある国際大会においてどのように評価すべきでしょう。ここの見方は専門家の方に譲ります。

会場内の飲食

まず食べ物はだいぶ後半になるとsold outが増えていました。残るのはポテトチップ、アイスクリーム、ポップコーンぐらいでしょうか。(私が大好きな!)ポンデケージョは場所によって残っていたりいなかったり、です。アリーナの近くなどではピザがあったもしましたが、多くの場所は菓子類の範囲でした。パーク内にはマクドナルドとカフェもありました(一ヶ所かつ並ぶのでパス...)。フードの充実具合は△評価。

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ビールを買うとついてくるカップが、各競技のイラストが描かれていてコレクションする人が多くみられました。オリンピックとパラリンピックは違うデザインで、ビールをオーダーするときに「この競技のカップある?」とたずねている人が多くみられました。街中でカップだけが売っていましたが概ね20-25レアル。ビールが中で13レアル(約400円)ですから、この人たちまさか飲んだのかと思いましたが、、どう流れてきているんでしょうね。

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会計(Caixa)で先に支払いを済ませてレシートをもって各ブースで受け取るという仕組みでした。これははじめてみました(社会主義自体のスーパーみたい...)。確かにお金とデリバリーの両方のオペレーションをしなくてもいいので量が多い場合には効率はいいかもしれません。とっさに追加したくなっても出来ませんが。

一部のブースでは、クレジットカード払いの場合には、CAT端末を持っているスタッフが立っていてCaixaの列に並ばなくても支払いができる工夫もされていました。

オフィシャルショップとマーチャンダイジング

パーク内、オリンピックスタジアム内、コパガバーナの海岸などをまわりました。規模は違えど基本的に品揃えは同じ。アパレルが中心です。あとアジア人にはサイズが大きい...。ペンなど文具があればお土産にいいなと思ったものの、そもそもラインナップにはCROSSなどのレンジ中心。さらに後半はsold outしてしまったということで一回も結局見ることはありませんでした。もう少し品揃えの工夫余地はあるはずです。

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レゴが相当売れ残っていましたね。売れている感じがまったくしませんでした。どこにいっても山積み。130レアルが100レアルまで値下げされていましたが、それでも売れないと思います。(買いましたが) レゴの相場からしたら中身から見て高すぎ。レゴを知っている人からするとパーツの数からして日本円で1200円ぐらいの相場の中身です。オフィシャル感があるとしても乗りすぎ。

デザインのセンスや色使いは国によって感覚が違うので良い悪いというのは何もありませんが、パラに限っては、ラインナップと在庫バランスはあまりうまくいっている感じはしませんでした。

言語

まずサインではポルトガル語と英語の併記が基本。これ以外はありませんでした。ボランティアスタッフの中で英語が話せる人は「話せるよ」と胸にかかれています。全般的に「通じなくても何とかしよう!」という雰囲気は感じられました。東京ではどのような計画かはわかりませんが、英語以外の言語もある程度は必要でしょうね。(ガイドブックのレベルで対応しても良いかもしれません)。

デザイン

会場以外での都市全体でのデザインの統一感は実はあまり感じられませんでした。わかりやすくいえば、地下鉄の路線の色の塗り分けは出てくる地図によって違いました。著しくダメだという部分はありませんが、一方で優れている、考えたな、と気づかされる部分には出会えませんでした。

チケット

Webかチケットボックスでのオーダーです。上に書いたとおり結局はかなりチケットが売れたので後半は手に入りにくい状況でした。Webのシステムをずっと見ていたところ、たまにチケットの在庫がポコッと出てくることがあります。ただWebの画面を手でクリックしていっても間に合いません。各競技ごとの在庫のありなしを表示させているページが固定URLだったので、スクリプト書いて「Unavailableと表示されていなければこのボタンを押下」という技で一つとりました。

Webの英語の画面で、支払方法が2つあるうちクレジットカードはブラジル国内の銀行で発行されたものと注意書きが書いてありましたが、もちろん海外発行のカードでも大丈夫でした。この表示は意味がわからなかったです。

オンラインでオーダー後、PDFを印刷するパターンと、Willcall(チケットボックスでの引き取り)と両方あります。Willcallでのチケットの方が何となく「チケット」という感じがしますね。ところで引き取りの際のオペレーションは結構バラバラでした。表示上は、「支払いをしたクレジットカード、オーダー番号、ID(パスポートなど)」でしたが、パスポートだけで済んだ場面と、3つも必要だった場面と両方ありました。

入場時等の本人確認はありません。エリア全体のゲートと、各競技での二箇所でのゲーティングです。携帯側の端末(有線ではない)バーコードを読み取りパターン。ちなみにゲートでわずかな時間差で「同じチケット(PDFを複数枚印刷した状態)で入場」してしまおうとしてもきちんとNGが出ましたので、瞬時に通信している模様です。実際、ゲートのテントの屋根あたりを見てみたらアンテナが立っていました。

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マラソン、クラス認定

車椅子マラソンはともかく、今回から競技に加わったマラソン(視覚障害)は、最初に競技参加者を見てやや驚きました(少ない)。女子のほうは7人。うち日本人は3人。詳しく調べていないので出場までのプロセスがどうだったのかが分かりませんが、マラソンというイメージと実際の人数がかなり離れていました。視覚障害のマラソンは(もちろんどのパラの競技も大変だと思います)、その練習環境も含めて大変だという話をうかがったことがあります。

一方、これに関連して各国の選手をみている中でクラス認定にやや感じるものも残りました。そもそも障害や疾病は外から見てもわからないのでなんともいえないという前提があるのですが、クラス認定が果たしてどの程度細かく各国でなされているのか(IPCのルールがあるとはいえど)は見ている側には分かりにくいなと感じました。ここは今後パラリンピックが社会の中に浸透していくにあたりIPCが継続的に努力すべき点ではないかと思います。

陸上競技

陸業競技はもともと競技場の中で同時進行していくのはどこの大会でも同じなのですが、より競技の種別が一般的な陸上競技大会よりも見る側にとって複雑(障害によるクラス分け、予選と決勝が混ざって進むことなど)であることを考慮すると、ここは見せ方の工夫が必要だと感じました。パラ競技に詳しい人には「T42」「T44」といわれてどのような障害かがイメージがつきますが、おそらく大半はそうではないはずです。見て分かることとわからないことがあり、何か工夫はし得るのではないかなと。

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ちなみにスタジアムに観客用のWiFiは飛んでいませんでしたが、いまアメリカでも日本でも進んでいるようにWiFi経由でコンテンツを飛ばすという方法は出来るようにも思います。書いてて気づきましたが、それぞれの競技会場にいくとWiFiの電波で何が飛んでいるかを調べていましたが、日本と比べてテザリングやWiFiルータを飛ばしている人が少ないのか、めったにそれっぽいSSIDを見ることはありませんでした。

ここからは番外編

ボランティアスタッフのグッズ

ボランティアスタッフのグッズが街中で横流しで売られていました。ウィンドブレーカー、Tシャツ、ポロシャツ、そしてバッグなどなど。

しばらくは「使われたもの」しか見つけられませんでしたが、一回だけ「新品」のものが。今回の大会は中国のスポーツ用品メーカーである361が提供しているのですが中国語のビニル袋に入ったままのものでした。聞くと仕入れルートがあるようで、いくらかで買い取っているようです。逆にオフィシャルショップのアパレルは361ブランドのものはありません。帰りにリオの空港で飛行機を待っていると2-3人、ボランティアスタッフのポロシャツを着ている人を見かけました。靴を履いている人もいましてね(売られているのは見つけられませんでした)。

ボランティアスタッフ用の生地がしっかりしている一方、オフィシャルショップで売っているアパレルがいわゆるスポーツ生地のものがほとんど見当たりませんでした(あるにはあった)。

JAPAN HOUSE

オリンピック期間中はかなり盛り上がりをみせたようです。またパラの期間中は毎日イベントがあるわけではないものの常設の展示などかなされていました。オリンピック、パラリンピックともにメダルをとった後の記者会見もここでされていたとのこと。

ただアクセスにかなりの難点。BRTで4号線の最終駅からは直行バスでオリンピックパークにいけるのですが、それに乗ると通過してしまいます。行こうとするとオリンピックパークの行き来には使わない普通の各駅停車(?)のBRTに乗る必要があります。オリンピックパークに近いところでは場所の確保が難しかったとしたならば、いっそ中心部やコパガバーナなどにおいてもよかったのかなとも感じました。

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このほか、日本の文化を伝える努力や展示、そして会場内では日本料理店が協力されて握り寿司のパックも売られていました。(35レアル。美味しかったです。)

閉会式

閉会式は二つ課題があったと思います。まず、テレビ映像ではなく閉会式の現場を見ているだけだと、日本の部分は何を伝えたいかが良く分かりませんでした。東京は夜の7時。ん。まずここ。そもそもブラジルは夜の8時。日本は朝の8時すぎ。ひたすら日本語の歌詞。ポルトガル語(英語?)の字幕は字が小さすぎて最前列ぐらいからでも読めない。今は閉会式イベントもテレビ向けに作られているのでことさら現場向けにどうこうとはありませんが、少なくともスタジアムにいたブラジル人には伝わりにくい内容だったと思います。残念ながら都知事との旗の引継ぎも、会場では引きの映像がほとんどで、もっと抜いてほしかったなと...。一言でもポルトガル語で「次は東京で!」という場面があれば盛り上がったかもしれません。

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テレビでの映像をまだ帰国してみておらず確認できていませんが、驚いたのは閉会式がはじまってすぐに選手が帰り始め、「あれ、なんで帰るのかな。帰りのフライト? この時間に帰るとは思いにくいし」と思っていると、結局最後の挨拶の時点では選手の4分の3以上は会場には既におらず、観客は取り残されていました。途中から雨が強くなったこともありますが、その雨のせいなのか中身のせいなのか。もっとも音楽のフェス状態の乗りだったので会場にいたブラジル人のお客さんの満足感は強かったのではないかと思います。

まとめると!

まず、事前に言われていたようなリオの危険さは本当に感じませんでした。明るくノリのいいリオっ子は、楽しんでパラリンピックと接していたように思います。いわゆる「かわいそう」という眼ではなく、心底ゲームを楽しんでいました。またブラジルの選手やチームが出場していなくても大きな声援を送ってくれていたことも印象的です。これは日本にパラリンピックが来るときに果たして日本の人はできるかな。

ある夜、食事の場所で、横のテーブルが車椅子バスケのヘッドコーチが所属しているチームのメンバー、という3人の日本人と一緒になりました。その一人の彼からは「絶対に次の大会に出ます!」という言葉があり、こう言いきるという力にも感激しました。実際に今回出場していた多くの選手から「やる!」「力を出しきる!」という力強さを目の前で見せてもらうことができました。

少し長めの視察でしたが、大変色々なものを持って帰ってくることができたと思っています。少しでもパラ競技に、そして東京大会に向けて貢献できるよう、この視察での成果を出していきます!

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