シェアサイクル チャリチャリ 自転車

自転車の持続可能性

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4月28日からチャリチャリの熊本市内での展開がはじまりました。熊本で展開したいと考えてから3年ごしの実現です。前日に熊本市内を歩いていたとき、ついに熊本で走り始められること、ここにチャリチャリが走るということを想像したらそれだけで嬉しくなってしまいました。28日には熊本市の大西市長と会談させていただき、開始を報告させていただきました。今日はGW中日の移動で新幹線の中にいます。

よく、「何都市に展開するつもりがあるのか」「他社と比べて展開している都市数が少ないがそれで成り立つのか」と聞かれます。前のpostで書いたとおり、私たちはこれで4都市め。福岡で結果を出してきたことを名古屋、東京、熊本と横展開して再現していくんだといえば経営戦略的には聞こえはいいわけですが(そしてそのような言い方をするときもありますが)、地域の歴史、街の構造、住んでいる人たちの習慣などはあらゆる点で異なり、コピーすれば終わりというものではありません。そもそもコピーするつもりすらないです。唯一同じ考え方であることは、交通結節点を重視することとドミナントで展開するということの2つだけ。

いくつの都市に展開するつもりなのかの質問については、明確な数字の答えはありませんが、少なくとも「たくさん展開したらむしろ全部おろそかになる」「今展開させていただいている地域でいかに深く移動のニーズを汲み取ることができるか、新たな楽しい移動を創り出せるか」ということは申し上げられます。ポートを設置し自転車を投下すれば使われるでしょうという考え方は私たちには全くありません。一つ一つの地域の皆さんとのコミュニケーションをしっかりと取ろうとすると、自ずと展開できる物理的な数は今のところ多くなることはないのです。むしろ、福岡、名古屋、東京、熊本という4都市のポテンシャルは十分にあり、十分に持続可能な事業が生み出せると考えています。

日本に自転車保有台数の明確な統計はありません。ただ、日本全体で見ると世帯数とほぼ同等、福岡県で見ると世帯数に対しておよそ80%、愛知県で見ると同じく115%という数字があります(自転車産業振興協会, 2021年度 自転車保有並びに使用実態 に関する調査報告書)。この数字にあてはめてみて考えると約5,000万世帯の我が国において、ほぼ同数の自転車が国内にあると言えます。これは過去に言われてきた6,000〜7,000万台という自転車の保有台数と比べるとやや小さくなりますが、この1,000〜2,000万台の差は、放置自転車などで実質的に所有者の管理下を離れている一方で街の中にあり続ける自転車や、普段使っていないが眠っているという自転車を組み合わせればさほど大きなものではないともいえます。いずれにしても、日本は「自転車大国」なのです。

仮に福岡「市」の世帯数と自転車台数を同数だと見たとき(感覚的にはそれよりはるかに多いはずですが)、少なくとも85万台の自転車があると推測できます。ただ、ここに課題があります。この台数の大半は「ママチャリ」です。子ども用自転車、子乗せ電動アシスト、スポーツ用自転車など個々人の生活スタイルや所有することも含めた趣味嗜好性の高いものもありますが、他方で駐輪場所の整備・維持コスト、自転車を支える自転車店の減少という要素があります。

バイチャリとチャリチャリを両方やっていてどう考えているのか問われることもありますが、答えはシンプルです。私たちはスポーツ用自転車の多くはサイズやデザイン、ブランドを含めて趣味嗜好性が高いものとして今までなかった自転車のリユース文化を創りたいとチャレンジしている一方、日常の移動に必要なママチャリタイプの自転車は、可能な範囲でシェア化したいと考えているのです。自家用車と同じく、所有自転車はおよそ95パーセントの時間は自宅または駐輪場に停まっています。この自転車を出来るだけ多くの人に便利に使ってもらえるようにすれば、共有するという文化も自然に無理なく受けいれていただけるのではないかという仮設が、チャリチャリのドミナントモデルです。

いま、福岡でのチャリチャリの台数は投入台数ベースで2,500台。稼働している台数は整備などの理由でそれより少ないものの、1日16,000回から17,000回使われています。都心部には公共の駐輪場が過去の多くの方の努力により十分に整備されています。福岡市は放置自転車ワーストワンを返上し、附置義務もあわせ、地上や地下に必要な量が確保されています(そうしたら、それまで次点だった名古屋市が連続でワーストワンなのですが!)。こうして大都市の真ん中に、1日100円〜200円で自転車が停められるということは大変便利なことです。一方で、その自転車の多くは朝から夕方までその場所に留まり続けています。同じ場所を活用するならば、出来るだけたくさんの利用があるように促すことが望ましい姿ではないかとも思います。

「所有から共有へ」というキーワードは高島市長との会話の中からも何度も出てきました。私たちのミッションである「まちの移動の、つぎの習慣をつくる」を、まさに一つ一つの都市で実現しようとすれば、展開都市数で競うつもりや、それが事業の継続性を創り出す理由にならないということをおわかりいただけると思います。

三河安城駅をこえたとのアナウンスがありました。ここから名古屋駅までは9分です。ではまた。

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