感じたこと

柔道整復施術療養費の受領委任制度など

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昨日は私たち男女共同参画会議議員や各専門調査会の会長の皆さんと、玄葉大臣、大島副大臣との昼食を一緒にしながらの懇談会がありました。玄葉大臣と横の席で色々とやり取りした中では、我々の世代が20年後、30年後を見て男女共同参画社会の未来が見えないと、それこそ優秀な日本の若い世代はどんどん外に出て行ってしまう、目先の話ではなく、数十年単位の男女共同参画、男女平等、マイノリティに対する政治の取り組みが必要、ということをお話ししました。何より勝間さん最後まで絶好調。議事録が無い分、楽しい懇談会でした。

さて、今日は最近、一つ気になっている法律、柔道整復師法について。ちなみにこの法で定められている柔道整復師は以前は年間に1000人前後の合格者数の推移をみてきましたが、直近では1年の試験で5000人を超えるなど、有資格者が激増しています。同時に、このいわゆる保険請求について様々な問題が指摘されています。このうち代表的な問題は療養費の「受領委任払制度」についてで、病院でかかる医師の診察(一般の保険医療機関)とは違い、施術所では、施術料金のうち、患者負担分については患者本人にまず請求します。そして残りの施術料金については、患者に記入してもらった申請書に基づいて(=患者からの受領委任)、療養費支給申請書により各保険に請求しています(厚生労働省のWebサイトによる)。ところが、この申請の手続きの際に色々「隙間」があるため、肩こりや捻挫は施術所では保険利用はできないはずにも関わらず、実態は症状を書き換えて申請しているケースがかなりあるのではないかということで、その保険利用の適正性について民主党政権になってから指摘が出始めてきているのです(各地方厚生局からは「柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いの中止」などとして、頻繁に監査で問題になったケースを発表していますが、明らかに目立ちすぎた事案が中心です)。また直近では、行政刷新会議によって治療費の多部位請求の給付率、医師の許可を得なければできない骨折及び脱臼への施術に対する同意有無、施術書に領収書発行義務がない点などが問題になり、今年6月1日には厚生労働省からこれらの取り扱いに関する改定内容が発表されています。

そしてもう一つ、Webサイトを色々と見ていると気になるのが、整骨院や接骨院のWebサイトでの広告表現です。柔道整復師法第26条では柔道整復師の「広告の制限」が定められていて、「文書その他いかなる方法によるを問わず」として、
1. 柔道整復師である旨並びにその氏名及び住所
2. 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
3. 施術日又は施術時間
4. その他厚生労働大臣が指定する事項
これら4つ以外の広告はしてはならない、としています。また、第二項では、これらに基づいて広告する場合でも、「その内容は、柔道整復師の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない。」としていて、柔道整復師個人の技能や経歴などにそもそも広告内容で触れてはならないことを規定しています。これは医療法第6条の5などに定められている医師などの広告の範囲がこれとは比較するとある程度広く許容されている一方で、柔道整復師については平成11年3月の厚生省告示で、施術所の予約・休日・駐車設備などの情報を載せてもよいと定めている以外にはありません。

しかし、実は病院・診療所などを規定する医療法ではWebサイトは「広告」の範囲には含められていません。Webサイトに掲示するバナー広告や、あるいは電子メールは広告の範囲としているのにも関わらず、Webサイトは広告ではないと決めています(医療広告ガイドライン,平成19年3月30日付)。恐ろしい現実との乖離。厚生労働省の官僚が理解していないというより、明らかに医療界からの力が見られます。ただし、この医療広告ガイドラインが、柔道整復師の開設する施術所にも準用されるかどうかは解釈を見つけられていません。医療法と柔道整復師法の個別の法律論からすると別だといえ、柔道整復師の施術所のWebサイトについては柔道整復師法の広告の制限に定められた範囲と考えられます。

これを踏まえ、整骨院や接骨院自体のWebサイトをざっと見ていると、明らかに柔道整復師法の広告制限を超えていたり、いわゆる医療類似行為の範囲に触れるような文言が多く見られます。中には本当にごくまじめに法律に沿った情報しか書いていないWebサイトもありますが、残念ながら多くはオーバーな情報です。また、治療という言葉を使っているところも多く見られます。医療法第3条で治療の表現を医師などに限って規定していますが、どうも私の見た感覚では整骨院や接骨院のWebサイトの半分近くにはこの言葉が現れており、明らかに素人には誤解を招きます。

厚生労働省や各地方厚生局は今まで、ある程度の線を越えたところで指摘する、ということを繰り返してきましたが、そろそろこうした広告表現の問題などについては大きく改善しなければなりません。なぜならば上に書いたとおり、就業柔道整復師が4万4千人程度しかいないにも関わらず、毎年の試験合格者だけは年に5千人程度と大幅に増えており、明らかに就業可能場所が減りつつあるためです。就業可能場所が物理的に無い場合にどうなるかというかと、必然的に今まではあまり募集しても採用ができなかった医療類似行為ぎりぎりのラインの施術所などにも若い人が流れるようになり、結果として悪循環が起きることが十分に想像できます。これまでの法制度の背景には自民党時代の柔道整復師会顧問議員団の人たちとの様々な経緯があるように見えますが、若い人たちを、結果的に難しい道に引きずりこまないよう、そろそろ手を打つタイミングです。

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