関心のあること

主要な手動型車椅子メーカーが愛知・岐阜に集まっているということ

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手動型車椅子メーカーが愛知・岐阜に多いということ

僕も昔からこのことを講演などでお話しをする機会がありましたが、改めてぜひ知っていただきたいと思い取り上げます。下のリストをみていただきたいのですが、実は日本の主要な車椅子メーカーは愛知と岐阜に集まっています。覚えている範囲で完全に私の記憶を頼りにリストにしたものですが、私の10年ほど前までの車椅子の経験からすると、だいたい日本製の車椅子のシェア9割はこのリストの上3つのメーカーだったのではないかと思います。見ていただくと、本社が愛知県と岐阜県に大変多く、このうち今仙は今年になって愛知県犬山市から近隣の岐阜県各務原市に移転したばかりです。さらにこのうち、日進医療器と松永製作所がそれぞれ国内市場のシェア3割をもっている双頭の企業で、病院などで見かける車椅子の多くはこの2つのメーカーのいずれかではないでしょうか。ちなみ、松永製作所の創業者の松永社長は日進医療器の当時の社長の従兄弟という関係で、ある意味日本の車椅子シェアの過半を「松永家」が持っているとも言えそうです。

  • 日進医療器株式会社 (愛知県北名古屋市,従業員150人)
  • 株式会社松永製作所 (岐阜県養老町,従業員130人,売上46億円)
  • ニック株式会社 (名古屋市南区, 従業員145名 売上23.7億円)
  • 株式会社カワムラサイクル (神戸市, 従業員129人,売上34億円)
  • 株式会社三貴工業所 (愛知県名古屋市,従業員120人,売上30億円)
  • 株式会社マキライフテック (名古屋市中川区)
  • 日本ウイール・チェアー (東京都西東京市, 45名)
  • 株式会社今仙技術研究所(岐阜県各務原市,41名)

※本社所在地、従業員数、売上高は各社のWebサイトで記事掲載時点で公開されている情報です

なぜ愛知・岐阜に集結しているのか

これには諸説ありますが、確かに愛知・岐阜というエリアが自動車産業・工作機械などの製造業の土地であり、その下請けを含めたメーカーが数多くあることで工業技術が集中している点は、各企業の成長に寄与している点があるかもしれません。愛知県産業立地通商課が取りまとめた「東尾張地域基本計画」という書類にも、航空・鉄道・自動車といった業種の幅広い技術集積がこれらの産業の発展に影響しているとしています。ただ、客観的に示されているデータはなく、私もこの説を有力視はしてはいるものの、それだけでこの集中度合いは説明がしにくいところです。いろいろ専門的な研究がないかと思って調べてみたところ、その一つである日本福祉大学の岩田龍子先生の研究によれば、別の仕事をしていた会社がその事業だけでは利益が出にくくなり業態を転換したケースがあることを指摘されている点は新鮮です(「福祉支援活動のビジネス化と起業行動」2002年12月)。確かにニックの場合には部品メーカーからの転換で成功したと訊いています。

いずれにしても、福祉機器・高齢者向け産業といったものが愛知県・岐阜県の「隠れた強み」であることは随分前から指摘されていることです。ただ、手動型車椅子に限ってみても中国製・台湾製などの車椅子の輸入が増え、極めて安い価格の製品が日本に入ってくるようになり、日本での強みはオーダーメイド車椅子に集中しています。機能性やデザインだけで見ても、もともとアメリカ製やヨーロッパ製の車椅子もかなり以前から輸入されてきました。次の10年・20年で愛知・岐阜の強みで有り続けられるのかどうか、とても注目しています。

おっと、そういえば、国際福祉産業機器展(ウェルフェア)という世界中の福祉機器が集まる展示会も、実はずっと毎年名古屋で開かれています。

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