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シェアサイクルの事業モデルからの視点

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シェアサイクルの国内の状況

今年3月の国土交通省の資料では、全国でシェアサイクルを本格的に導入している都市は170都市。観光型のシェアサイクルで規模の小さいものもほかに存在しますが、概ねこの数をとっておけば妥当なところだと思います。一方で、この数年、実はシェアサイクルが事実上なくなってしまったもしくは事業者が撤退した都市も存在しています。福岡県内だけで見ても、久留米市は無人のシェアサイクルから有人貸し出しに、福津市、古賀市、飯塚市からは事業者が撤退しています。福岡市も過去には複数の事業者が存在していましたが、今はチャリチャリだけが都市型のシェアサイクルとして存在しています。

シェアサイクルの導入にあたっての期待値と実態の乖離がある点も現場ではみられます。全国の都市がシェアサイクルの導入を推進する最大の理由は「観光戦略の推進のため」。次に「公共交通の機能補完のため」と続きます(令和4年3月, 国交省)。しかし、「こことここを自転車で結べるといいな」というニーズに対して、必ずもシェアサイクルが単独の事業として成り立つケースは多くはありません。こうした声は大変よく伺いますが、私の個人的な意見としては「限られた箇所の周遊性を高めるためには、むしろレンタサイクルモデルでないと成り立たない」と申し上げています。ここでいうレンタサイクルモデルとは、1日あたり1日600円から1500円程度、特定の場所で有人によって貸出・返却を受け付けるモデルです。比較的うまくいっているとみている例では滋賀県の湖東地域、彦根を中心としている「めぐりんこ」があります。

レンタサイクルモデルの場合、仮に50台の自転車が平均1日800円、土日に8割稼働してくれれば(平日にはほぼゼロという保守的な想定)、月間25〜30万円程度の収益が見込め、自転車の投資回収負担は大きくありません。電動アシスト自転車やスポーツバイクでもう少し単価の高いものもミックスすれば全体の金額を大きくすることも見込めます。貸出・返却の業務を観光案内など他の業務と兼ねることが出来ればここにかかわる人件費を他のサンクコストとして見込み、ROIで考えても十分に成り立ちます。実際、京都市内のレンタサイクルがコロナ前まで活況だったのはこういうモデルです。宿泊場所を起点・終点とすることで場所の確保は容易ですし、貸出・返却手続きも負担がありません。一方で、こうした利用シーンにシェアサイクルを導入しようとすると途端にシステム費用や運営費用が大きくなり、事業単独での採算は見込みづらくなります。

多くのケースでは公設民営として費用負担を自治体が行い、事業者はこれを財源として運営しています。費用負担の方法についてもいくつかのパターンがあり、「シェアサイクルを導入するための業務を委託するから、この金額で」(あくまで導入部分だけを切り出す)とする手続きと、複数年度の事業期間を設定し「この期間のシェアサイクルを運営をするために公設民営でやるよ、そのために最大で事業費をいくらまでは自治体が出すよ」とする手続きの2つに大きく分けられます。一方で、費用負担がないケースもまた大きく2つに整理されます。福岡市や熊本市のように「共同事業」として、その費用を事業者が全て負担する方法と、名古屋市のように「協定」を締結する一方で事業自体は民間の独自の計画により進める方法とがあります。

全国のシェアサイクルの回転数の状況

さて、費用負担を自治体が行わない、又は上限金額が事業の費用支出見込みを上回る場合、その都市でのシェアサイクルの利用収入により収益を見込む必要があります。ここが簡単なことではありません。楽観的な見込みすぎる事例が多々あり、すぐに尻すぼみになっている事例が全国各地に存在しています。1日あたり自転車が平均的にどの程度使われる見込みがあるかを冷静に見極める必要があります。ここで国交省が出している資料を抜粋しましょう。全国で見ると令和2年度でその回転数は0.5未満が74%、1未満が9%、1.0以上が18%と、全国の8割以上の都市でその回転数が1を下回っています。これの意味するところは、完全に採算ラインを割ってしまっており、事業費の補填が無いと厳しい水準にあるということです。一方、都市圏中心部に限ってみれば1.0以上が71%と比率が上がります。ただこの統計の見せ方が不足しているところには、「1.0以上のその上がどのように分布しているかが分からない」という点です。

出典: 国土交通省(都市交通の中でのシェアサイクルのこれから~速報版~)

圧倒的に高い回転数

先に申し上げると、私たちが見ている地域ごとの採算ラインは「月平均で1日あたり4.0」です。平日、休日を問わず、そして雨天が一定程度あることを踏まえ、その月の平均で1日あたり4.0という水準が見込めるかが基準です。ここで平均で4.0を見込むためには、晴天の日に5.0〜5.5回転程度が期待できる見込みが必要です。実は2.0までは比較的見込みやすいのですが、なぜならば朝晩の通勤ニーズにうまくフィットすれば達成できるといえるからです。ところがこれ以上使って頂けるようになるためには、平日の昼間や夜、休日のご利用がそれを上回る頻度であるとの見込みを立てられるかが肝になります。単に人口規模だけでなく、人の移動が何によって支えられているのか、公共交通機関と自家用車の比率はどのようになっているのか、駅・バス停・電停と人の移動ニーズはカバーしきれているのかなどを見ています。チャリチャリの福岡では実稼働ベースの車体で見ると現時点で平均7〜8回転の水準で国内トップクラスの水準にあるはずですが(比較できるデータが公表されていないので残念ながらうまく表現は出来ないものの)、都市部におけるシェアサイクルとして目指すところとしてはさらに高い目標を持っていきたいと考えています。ちなみに、都心部にいる車体は1日に15回から20回も使われていることもよくあります。

せっかく地域あげてシェアサイクルを導入するならば、「導入することが目的」ではなく、定着するところまで目指したいところです。先日、クララオンラインの東京のメンバーが福岡へ展示会のために出張に行っていた際、どなたとお話ししてもチャリチャリの存在を知っていただていたと喜んで教えてくれました。自転車とポートの密度を高く、という方針を私は「ドミナントで展開する」と表現しています。ちょこっとやって終わり、ではなく、目指すはニューヨークのcitibike水準の密度。これぐらいの高い利便性を実現したいと思っています。

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