Mobikeのネジの変化に注目する

Mobikeの初期型はサドルの高さが調整できなかった

中国のシェアバイクの最大手「Mobike」には、投入時期などによって様々な種類の自転車が存在しています。このうち、初期型のMobikeと、Mobike Liteのすべてのモデルはサドルの高さの調節ができません。

初期型の後に出てきたMobike はクイックリリース式のシートクランプがついていたり、油圧で上下するタイプが出てきたりしています。なお、Ofoは初期普及型以降すべてでクイックリリース式です。このようなサドルまわりの改善の話はいずれ書きます。

Mobikeのサドル

Mobikeのサドル。クイックリリース型のシートクランプ。油圧で上下する。

サドルの高さが低くて困った

初期型Mobike、そしてMobike Liteはサドルの高さの調整ができず、私の身長(177センチ)ではどうしても低く感じていました。そのため、周りを見渡して他にあればサドルの高さを変えられるものを選んでいました。上に書いたとおりOfoは当初からシートクランプがついており、しかもかなり高くできるので、一時期はOfoばかり乗っていたのです。

初期型のMobikeは完全にシートポストが固定されていたのでどうにもなりませんが、Mobike Liteはサドルの部分が動かせたので、ユーザの中には工具をもってきて触る人も。それが最初は六角ナットだったため、ソケットレンチを持ってきて簡単に触ることができました。

六角ナットだった初期のMobike Lite。

六角ナットだった初期のMobike Lite。

Mobike Lite。

Mobike Lite。六角ナットと六角ボルトの様子が分かります。

なお上のMobike Liteの写真は、2016年10月に最初に投入されたMobike Liteではなく、その後に続いて投入されたモデルです(違いはフレームとカゴの色で見分けられます。パーツの違いはほぼ見当たりません)。

六角ナットからヘクサロビュラへ

しかし、ユーザに勝手にサドルの高さを変えられても困ってしまうわけで、この「六角ナット」がこの1年間で変化してきました。先に結論をご説明すると、今は、いわゆるトルクス(トルクスは商標ですので「ヘクサロビュラ」などといいます)のいたずら防止のピンがついているタイプのボルトが使われています。

ヘクサロビュラ型のピン付きボタンボルトが使われている

ヘクサロビュラ型のピン付きボタンボルトが使われている

ヘクサロビュラでは一般的に流通している工具でも開けられてしまうので、一般的にはこうして真ん中にピンが立っているものがいたずら防止を目的に用いられています。日本で売られている街乗り用の自転車でピン付きのヘクサロビュラのボルトを見ることはなかなかありません。「いたずらを避けるための工夫」が伝わってきます。

なお、Mobike以外にもピン付きのヘクサロビュラをシートポストの部分に採用しているのは、確認している限りでは永安行(youon)だけ。他の自転車はほぼ全てサドルの高さは可変で、クイックリリース型のシートクランプが採用されています(Ofo、bluegogo、U-Bicycle、Unibikeなどなど…。例えば上海だとクランプではないものが見当たりません)。

ヘクサロビュラの前にはトライウイング時代があった

さて、調べていくうちに、ヘクサロビュラの前にはトライウイングのボルトだった時代が挟まっていたことが分かりました。私は中国にいるときにはひたすら自転車の様子をつぶさに見て何か工夫しているところがないかと上から横から下から斜めから見ているわけですが、ちょうどヘクサロビュラのボルトが採用される前に投入されていた自転車では、トライウイングだったようです。

なお、いたずら防止で使われるボルトの穴形状ではトライウイング以外にもトライクル、ワンサイド、ツーホールなどと色々とありますが、穴形状によっては締め付けトルクのバランスで壊れます。

しかしなぜトライウィングが採用されなくなったのだろうと街中を探していたところ、見つけました。イタズラの跡。

トライウイングの穴をイジられた結果、穴が壊れ錆びている。

トライウイングの穴をイジられた結果、穴が壊れ錆びている。

しっかりとイジられたんでしょう、この潰れ方を見ると、まともな工具ではなくマイナスドライバーぐらいを使われたのだと思います。もうしっかりと錆びていて、いわゆるネジ穴はボロボロです。ここまでくるともうお手上げです。

一方、この元の形状は下の写真です。まだキレイでした。

Mobike Liteのトライウイングのネジ。

Mobike Liteのトライウイングのネジ。

ただ、この穴形状ではマイナスやプラスのドライバーを突っ込もうとする人がでてくるわけで、結果、上の写真のように穴がボロボロになってしまいます。こうした事態を避けるためには、穴に関係ない形状のドライバービットがそもそも入らないよう、真ん中に「ピン」が立っている形状のネジを用いるわけです。

苦労と改善が見える

ここまでで僅か11ヶ月(Mobike Liteが出たのが昨年の10月という意味で)。100万台単位の自転車を、おそらくは数ヶ月単位でこのように細かく仕様を変えてきているMobikeのスピードに興味がわきます。

はじめからイタズラ防止に気を配っていたらヘクサロビュラのネジを採用できていたのではないか、との指摘を考えつくこともできるでしょう。しかし私はそうは思いません。市場に出してみてどのように使われるのか、仮にイタズラがあるとして、それが本当に困ることなのか、それともサービスの維持に影響するものなのか。これはやってみないと判断できないわけです。

ここまでのことは私が中国で見続けてきたことからの推測でしかありませんからMobikeの公式な見解ではありません。しかしおそらくは、

  1. まずは最もコストの安い六角ナット・六角ボルトで展開した
  2. そして、それではだめだと気づいたのでトライウイングにしてみた
  3. なおもさらにイタズラされるので、ヘクサロビュラにした

といった経緯があったとみられます。

一方、Mobike LiteではなくMobike の方も、単純なシートクランプから油圧式になる改善がされています。日本に投入されているタイプもこの油圧式。改めてサドルのシートピンなどの変化についても取り上げたいと思います。

JALの国際線でWiFi機材にあたりたい – 767と787の場合。

一往復だけ767が投入された結果

日本航空(JAL)の羽田-北京便のうちJL025/020が787-8から767に置き換わってはや1ヶ月半。正確には7月15日あたりからちょこちょこと767が入り始め、8月1日からは767だけになりました。朝に羽田を出て夕方に北京を出てくるJL021/JL022は引き続き787が飛んでいます。いわゆる夏ダイヤ・冬ダイヤというタイミングだけでなく、機材繰りや需要によって機材はちょこちょこと変わっています。

JALの国際線用の767すべてではなく投入されている機材によるのですが、北京便にアサインされているシップ(A41かA43のconfigでくると非搭載)ではWiFiがありません。ここしばらくは787でもWiFiサービス対象機材がアサインされることが多く(E11のconfigがアサイン)、羽田-北京の往復の上空で集中して仕事ができる環境があり助かっていました。が、JL025/020が767になってふと、「上空で仕事できない」と。

上空でどのように過ごすか

人間、新しいものが得られるときにはよいのですが、あったものがなくなる方への適応能力は低いものです。日本-中国移動でCAやCZ、もしくは海南航空などに乗るときにはタブレットに本と雑誌を突っ込んで読むことにしていますが、JAL便/ANA便となると期待値が自然に高くなってしまい、このように「WiFiがない機材」になった瞬間にフリーズ。

人は上空で、仕事をするという以外には、寝る・読書をする・ビデオ/映画を見る・ゲームをする・誰かと話す(誰かがいれば)・おいしいご飯を食べる(ビジネスクラス以上ならば)などの選択肢があると思います。このうち、寝ること、ビデオ/映画を見ることは、昼間移動の場合、頭が仕事脳からリセットされてしまうので私はどうしてもイヤで避けています。ゲームもいまどき通信しないと何もできません。

さらに、ワタクシ、機内で誰かと話すのはとても苦手なので(静かにしておいてほしい)、出張が重なりそうな人が社内にいる場合でも「同じフライトに乗ってもいいけど(本当はイヤ)シートを離しておいてねー」ということにしています。

だととすると残るは自然に「読書をする」ということになりますが、タブレットにちょうどよい本が入っていなかったり、ダウンロードが不完全だったりすると悲しいことに。最近は紙の単行本を買うこともないですし…。JALの機内誌では浅田次郎の連載、ANAの機内誌ではお弁当のコラム。これしか「読みたい」ものがないのもまた本音。

そう、乗りなれた路線になればなるほど慣れは禁物。時間を効率的に使いたいのであれば搭乗前に事前確認と準備をしましょう。

中国の上空でもFacebook/Twitterにつながる

なお、日本-中国便でWiFiがことさら有難いのは、上空のインターネットは国際ローミングですので、たとえ中国の領空であっても、いわゆるGreat Firewallの影響を受けないこと。日本からならば着陸ぎりぎりまでFacebook Messengerやtwitterが使えます。外の方とのやり取りに意外とFacebookが多いのです。

ところで、大連の上空あたりで衛星の電波が途絶えるのは、あのあたりで衛星のカバレッジエリアの空白があるのか、何かしらハンドオーバーが途切れるタイミングがあるのでしょうか。どなたかご存知であれば教えてください。一度衛星のカバレッジを調べていたのですがよくわかりませんでした。このあと数年でさらに上空の衛星は増えるようですので楽しみにしています。

冬ダイヤで羽田-北京便はまたすべて787になるよ

ここまで書いておいてなんですが、JL20/JL25は冬ダイヤ(10月29日から)で787-8に戻ることに、またNRT-PEKのJL860/869は737-800から767になる予定です。

もちろん787-8のすべてがWiFiサービス対象機材ではなく、シップによります(確かあとE01で6機ぐらいが未対応。E11のコンフィグでシートマップが出ていれば対応です。E01だと一部が未対応なのでレジで調べましょう。)。

それでは最後にまとめ

ここまでの話を箇条書きで書くと、このような感じです。

  • JALの787-8の場合、シートマップを見てE11のConfig の場合には全機がWiFi対応。なおJALは787-8は国際線にしか投入されていない。
  • E11なのかE01なのかの判断をしたい場合には、オンラインチェックインか予約のシートマップの画面を見て、JALの機内座席配置のページと見比べればよい。2017年9月現在、プレミアムエコノミー用のシートがあるかないかで簡単に判別でき、あればE11。
  • E01の中で未対応機材はおそらく6機。JA822J、JA825J、JA826J、JA829J、JA830J、JA834J。飛ぶ前にどのシップがアサインされるかは色々な調べ方があるが、例えば Flightradar24のデータ検索ページで「Search for flight」に便名を入れると、当日の予定機材が()の中に書いてある。試しにここにJL22と入れてみると、ここしばらくはJA841Jが張り付いていることがわかる。(2017.9.15執筆時点)
  • JALの767の場合、A41とA43のconfigの計7機がWiFi非搭載。これも比較的見分け方は簡単で、767の機内座席配置を見ればわかる。なお、通常は国内線を飛んでいるA25とA27が国際線で飛ぶ場合、国内線用のWiFiサービスにしか対応していないため、国際線区間ではWiFiサービスは提供されない。同じく座席配置をみればわかる。
  • ざっくりとならば SeatGuruで調べるのでもいい。(ただしシップチェンジにまでは対応していないことがある)

中国のシェアバイクの「再配置」事情

利用ニーズにあわせた自転車の再配置

MobikeとOfoは、シェアバイクの自転車が溜まったエリアから必要と見込まれる場所へ移動させる「再配置」をしています。

例えば朝の通勤時間帯に駅からオフィス街に移動が集中すると、いったん昼間は稼動が減るのでまた別のエリアに持っていくわけです。そして夕方になるとまたオフィス街に集中的に移動させてきます。単に朝昼晩の時間帯だけでなく、量を見ながら細かく配置を工夫している様子が伺えます。

移動をしているのは

北京で見ていると、再配置をしている様子を見かける量は圧倒的にMobikeの比率が高く、その半分ぐらいの量でOfo。移動させる手段に用いられているのは写真のような電動三輪車が主です。

Mobikeの自転車を移動している。比較的綺麗に載せているほう。だいたい何台かの自転車がピーピー鳴ってる。

必ずしもユニフォームや電動三輪車のデザインは統一されておらず、電動三輪車にMobikeのシールをつけて走っている様子もいれば、Mobikeのビブスを着ているだけの人も。つまり、これらの作業を請け負っている人たちがいるわけです。最近、OfoのTシャツを着ている人を初めて見かけました。あのTシャツ、欲しいです。

Ofoの自転車を移動している様子

Ofoの自転車を移動している様子。はみ出しているのはどこも同じ。

Mobikeのビブスを着ているオジサマ

Mobikeのビブスを着ているオジサマ。これも欲しいなぁ。

Mobike

夕方のお仕事。これから移動させにいくようです。写真、ブレてる。

何度か大型のトラックで移動しているのを見ましたが、どうやら「投下」作業が中心で、再配置には細かく電動三輪車が活躍しているようです。

再配置の単位

一台あたりで再配置できる量はせいぜい10台。人によってきれいに積んでいる人もいれば、下のOfoの写真のようにとにかく詰め込んだぜという人も。さすがにステキな乗せ方で興奮したのであわてて写真を撮ろうにも手がブレました。

いつもよりたくさんのっておりまーす

そう、ワタクシ、この再配置をしているオジサマを見るのが好きで必ず写真を撮っています。そういえばこの仕事をしているのはオジサマしか見ていません。

 当社のオフィスの周りでよく見かける再配置オジサン。

当社のオフィスの周りでよく見かけるオジサマ。

他社はどうしているのか

一方、この2社以外のシェアバイクでの再配置の様子は見えません。bluegogoは一度だけ移動しているオジサマがいましたが、それ以来ありません。ほかの自転車は「ユーザお任せ」のようです。

ところで、Mobikeの方によれば移動・再配置は利用データに基づいているとのことですが、正直、本当にほしいときにはすべて移動させられているときがあり(特に、夜でタクシーが捕まりにくい時間帯)、「あれだけ昼間にダブついてんのに今ここに一台も無いの!持っていきすぎだよ!」と思うことも。そういうときに限って、「見つかった!やった!」と思ったら自転車が壊れているというガッカリに出会い、コノヤローと思うわけです。よってオジサマ、全部持っていかずに、もう少しだけ残しておいてください。

敷地の入口に「共享自行车禁止进入本小区」「共享单车禁止入园」と書いてあったり建物の正面に「禁止停放共享自行车」という看板が出てたりと、一気に「ここ入るなよ・置くなよ」という文字を目にすることが増えました。また、歩道がこの写真のようにほぼ自転車で埋め尽くされている場面もあります。

歩道の様子

歩道埋まっちゃってるよ!

中国中で「問題」として取り上げられることが増えてきていますが、これだけの量を投下した以上、人間の移動だけで自転車が最適化された配置になることは難しいでしょう。私個人は、こうした状況にイライラとするのではなく、きっとすぐに改善策を考えるだろうなとそちらを楽しみにしているところです。今後各社がどのように再配置を工夫するのかに注目しています! ガンバレ!

シェア電動車「小鹿単車」(DEER BIKE) – 後から追いかける人たちが次々と工夫してくる

「小鹿単車」(DEER BIKE)が北京で頑張っている

シェアバイクの電動車版「シェア電動車」が増えてきています。中国語では「共享电动车」。シェア電動車には以前blogに書いた上海の「享騎電動車」やmangoなどがありますが、北京の一部では「小鹿単車」(DEER BIKE)の展開が進んでいます。

シェア電動車「小鹿単車」(DEER BIKE)

「小鹿単車」(DEER BIKE)。当初投入されていた形状からはバッテリーまわりが変化している。

どこで展開しているのか

北京の一部のエリアだけで展開をしています。地図を見ると南は亮馬橋路、東は三環から光煕門、そしてずーっと北にいって北五環、そして東五環から酒仙橋を囲むエリア。望京をぐるっと囲んでいると思っていただくとよいでしょう。この会社が三元橋にあるからなのかもしれません。

エリア指定がわかる。北京の北東エリアでのみ展開。

エリア内の電動車の状況。よく見ると左下に一台はずれているものがいる。

料金と使い方

2キロまで1元、そこからは1キロ0.5元。エリアから出ると1分3元とられます。出られないわけではありません。出られました。あとは特にシェアバイクと変わりません。QRで開けましょう。

ただし「日本人を含め外国人は使えません」。そもそも身分証番号がないと登録できません(もぅ..パスポートで使わせてよ…)。日本人でどうしても体験したい方は、中国人にお願いしましょう。

バッテリーを完全固定にしている

享騎電動車はバッテリーが盗まれる事が続き、がちがちに固定する工夫をしています。

再掲。カバーがついた第二世代。

そしてmangoはバッテリーを足元においてカバーで完全ロックしています。ただ、これでも鍵を開ける人が出そうです。ここまでくると、あとはカメラをつけて監視するしかないのではと思いますがそれでもバッテリーほしいですか…。売れるか…。

mango(芒果共享电动车)

mango(芒果共享电动车)

しかし、小鹿単車のこのバージョンでは、どこからどうみてもバッテリーは抜けません。いいですねぇ。どうやらサドルを上げるといけそうですがガチガチ。後方に充電用のコネクタを装備していて、ここにおそらく電源ケーブルを接続して充電するのでしょう。よりイタズラされにくくなっています。おっとだめですよ、ここにガムとかつけちゃ。

小鹿単車のバッテリーの充電コネクタ部分

小鹿単車のバッテリーの充電コネクタ部分

エリア指定をしているのも工夫の一つに見えます。三環の中に入ろうものなら事故も増えそうですし管理も大変。パークアンドライドではないですが、亮馬橋・望京・酒仙橋あたりの生活圏ならばちょうど使いやすい範囲です。(あれ、そもそも三環に入っちゃいけない交通ルールがあったかもしれない。調べておきます)

ユーザとして使っているだけではなかなか気づきにくい小さな変化ですが、MobikeやOfoも小さな改善が次々と行われています。細かく見ていると改善するべきポイントを考えている様子が想像できて楽しくなります。そして何より、私はこのような新しい工夫が次から次へと出てくるのがとにかく好きです。

小鹿単車は、出だしで事業がうまくいっていない報道を見かけていたのですが、踏ん張っているよう。ガンバレー

中国のシェアバイクを支えるConcoxとJimiとSIMComに注目してみる

3社の中国企業に注目

中国で普及し続けるシェアバイク。シェアバイクの仕組みを支える一つの要素は衛星測位システム(GNSS)+自転車施錠システム。スマートフォンで自転車についているQRコードを読み取ると、サーバと自転車が通信して解錠し、さらに利用終了時には自転車を施錠すれば同じく通信によって課金が停止する。あの「鍵」の中には通信機能が搭載されており、GNSSによる位置情報の把握と、サーバとの通信が行われている。

日本では中国のシェアバイクに関する技術的要素について説明される機会が少ないため、まずは簡単に通信まわりについてご紹介する。ここで知っていただくべきブランドは3つ。Concox、Jimi、SIMCom。いずれも中国企業だ。

SIMCom

先ごろスイスのu-bloxが買収したが、もとは中国のチップメーカー「SIMCom」。無線モジュールを作る中国発のトップベンダーの一つ。u-bloxは以前から日本に拠点がある。

シェアバイクに限れば、トップ2社のうち、Mobikeは初期からGNSS+GSM/GPRSでの通信解錠システムを持つ一方、Ofoは当初は通信せずに4桁ダイヤル錠だった。その後、4桁ボタン式に変える際、Mobikeと同様に通信機能を入れている。Ofoに限って言えば、当初投下した4桁ダイヤル錠モデルがそのまま出回っているからか、鍵番号を表示させる方法に今までは寄せてきた。しかしこのあと触れるConcox&Jimiの製品を見ると、4桁ボタンが無いものも検討していたよう。ただ実際にはこのモデルは見たことがない。

先週の展示会では、SIMComはMobikeとOfoの両方の「鍵」を展示。Mobike用にはSIM800L、Ofo用にはSIM868を提供したとのこと。このSIM800LとSIM868の目立った違いは、SIM868にはGNSSが統合されていること。とすると、Mobike用には位置情報は別チップなのかと思い、開けてみたい衝動にかられるところ。AliExpressで調べてみるとSIM800Lは4ドル以下、SIM868は6ドル以下ぐらいで出回っている。実際にはさらに安いと推測できる。もっとも、上のとおりSIM800L単体では位置情報が実装できないようにみえるので、SIM800Lが採用されたシステムの中身を詳しく調べてみたい。

展示されていたMobikeとOfo用のリモートロック

展示されていたMobikeとOfo用のリモートロック。SIMComは通信モジュールを提供している。

なおSIMComの担当者によればNB-IoTでは既に日本向けの型番を用意しているという。

Concox と Jimi

Concox Jimi

次に紹介するConcox(深圳市康凯斯信息技术有限公司)とJimi(深圳市几米电子有限公司)はいずれも深圳に本社のある「兄弟会社」。実際にはそれぞれのWebサイトで同じプロダクトラインナップが並んでいるし、カタログはConcox&Jimiとしてダブルブランド。2015年から今の関係のようだ。そしてConcox&Jimiの製品でシェアバイクに採用されているものが「BL10」。Ofoが採用したとのニュースがあったが20万個と書いてあり、供給はごく一部に限られているようである。

Concox&Jimiの「BL10」

Concox&Jimiの「BL10」

このConcoxとJimi。2社のストラクチャは複雑すぎて登記を見ただけではよくわからないが、流れから見るとConcoxの方が規模は大きい。一方、高行新氏という人物が両社に関与されているようで、Jimiの創業者のようだ。そして今、キーマンはこの人のように見える。写真を見る限り若そうでもある。そしてさらに調べていくとJimi Cloudというプラットフォームビジネスも展開しようとしている。

なお、このBL10。どうもSIM800LやSIM868が採用されているシステムとは違う。スペックを調べるとNewMobi(新移科技。これも深圳の会社)のMTK2503が載っており、このMTK2503はARM7EJが搭載されている。正確にはMTK2503というチップ名の商品がNewMobiのWebサイトには見当たらないが、MT2503の開発用ドキュメントを読むと概ね一致しているのでこの派生だろうと推測できる。ここまで調べてきてわかるのは、「鍵」についてもいろいろな製品が市場に出現してきているということ。

しかし、やはり我慢できない。これはBL10を買って中身をみるしかないと思いAliExpressを調べたら499ドルと出てきた。1個売りにしても高すぎる。好きとはいえ500ドルほどの話しではない。。。残念。

後日、手元にある永安行、U-bicycle、bluegogo、七彩単車、GONBIKE、天天騎、99の写真を並べて、どこか同じ機器を採用していそうなところがないか調べてみることにする。

Ofoもよく見ると4桁ダイヤルの次に出てきた電子錠でも異なるタイプのものがある(赤丸部分)。

ソーラーパネルで発電している

ではこうした機器の電力をどのように確保しているかといえば、当然バッテリーから供給しているわけだが、BL10はソーラーパネルからの供給を受けることをインテグレートしている。

Concox&JimiのBL10の説明資料。ソーラーパネルのインテグレートができる。

Concox&JimiのBL10の説明資料。ソーラーパネルのインテグレートができる。

実際、新しい世代のMobikeのカゴを見てほしい。カゴは荷物を置くためにあるだけではない。ここにパネルがある(実はこれが出てきた当初はしばらく気づかなかった。)。よく見るとカゴの下から電源ケーブルが出ているのがわかる。ある意味でOfoの初期は自転車側に電力を必要としないことで良かったのだが、結局、4桁ダイヤルと個人のスマホによる位置情報の限界に当たってしまった。

Mobikeのカゴにつけられているソーラーパネル

Mobikeのカゴにつけられているソーラーパネル

今のGSM+GPRSでの通信でも必要最低限のことは出来ているが、この次にはNB-IoTが出てくる。速度が変わるわけではない。ただしNB-IoTになればバッテリーの問題がかなり解決する。まだまだ中国のシェアバイクとIoTまわりは面白い。

パスポート番号

パスポート番号は変えたくない

 パスポートのページがいっぱいになり更新した。2010年からなので7年。増補によってページを増やし、さらに最近は、空いているスペースに押してとあえて頼むようにしてきた。国によってはそう言わないとページを無駄に使う押し方をする審査官がままいる。ページの真ん中に、しかも斜めでドーンと。ネット上では「鉛筆でスタンプの枠を書いてそこに押してもらう」というアイデアの人もいて、工夫の深さに驚いた。入出国の記録をスタンプで残すために自動化ゲートは使ってこなかったが、それでも今年に入ってからは諦めて自動化ゲートを使うようにしてきた。私の場合、中国のビザがある程度なのでビザがベタベタ貼られてページが足りないわけではなく、ただひたすら行き来を繰り返してくることによる。眺めてみるとこのパスポートになってからは大半が中国だが、それでも色々な場所へ行かせてもらった。
 
 スタンプの押し方をお願いするほどパスポートを長く使い続けたかった理由はいくつかある。パスポート番号が変わるのが大変面倒だからだ。書き換えなければならない先が多すぎるし、正直すべては覚えていない。例えば仕事では、海外の子会社における登記ではすべてパスポート番号が紐づいている。変更があった場合には速やかに届ける必要がある。実名認証が厳しくなってきた中国の場合にはさらに色々とある。役所、銀行、携帯電話の登録などが全部変わる。パスポート番号は航空会社に予め登録している場合もあり、ここでも漏れなく書き換えておく必要もある。航空会社によっては、名前のスペルが違うのと同様、最悪の場合には搭乗できない。

 このblogでも触れているABTC(APECビジネストラベラーズカード)も同様である。パスポート番号が裏面に印字されている。私の場合、ABTCの有効期限が先にきたため更新したのだが、今度はパスポートのページが足りなくなり、結局ABTCは再度更新。審査のプロセスは変わらないのでまた6ヶ月程度は待たなければならない。お預け。

昔は複数のパスポートをシールとリボンでくくりつけられていた

 実は、昔はパスポートをシールとリボンのようなもので複数冊くくりつけ、分厚い束のようにして持ち歩くこともできた。これを「合冊」という。離れないようにシール(契印)のようなものがなされる。これは入出国を頻繁に繰り返す地域などで特に意味があり(ページ数があっという間に枯渇する)、ビザをそのまま使い続けるためである。制度が変わり1990年4月施行の旅券法2次改正でこの方法は消滅したが、「合冊」時代でもパスポート番号は新しくなっていたようだ。ただ、古いパスポートに貼付されているビザとの連続性はこれによって証明しやすいため一定の利便性はあった。

 なお、今ではページの追加(旅券法では「査証欄の増補」という)のみが認められている。この増補も当初は16ページだったが24ページとなり、最終的には2001年に現在の40ページ追加になっている。旅券法の変遷は、日本人の海外渡航の歴史と重なるところが多く大変面白い。

 これを書きながら、ふと、いわゆる「イスラエル用パスポート」の人はどうなっているのだろうと気になった。特定の国のパスポートのスタンプがあると特定の国には入れない、という事情が世界にはある。イスラエルと大半のアラブ諸国・イラン、というように。日本政府はこの事情がある場合、メディアなど特定の職業の方に二つのパスポートを発行してくれていた(この仕組みは今もあるのかは不明)。その代わり片方のパスポートには「渡航先の制限」の欄に国名が書かれている。このとき、二つのパスポートのパスポート番号は別だったのだろうか。

フライトのときにパスポートだけはポケットにいれている

 ひとつのパスポート番号と「お付き合い」できる時間は最長10年。私のように更新するのが面倒だという人はおそらく5年パスポートは取らないと思うのだが、それでも渡航回数が増えると期限前に更新せざるをえない。さて、パスポート番号というものは更新よって変更しなければならない合理的な理由が果たしてあるのだろうか。今のパスポートの制度が出来たときと異なり、外国への渡航は極めて容易になった。また、マイナンバーカードができ、色々な指摘はあれど「背番号制度」は出来あがった。私はエストニアのe-residencyをとったが、「背番号制度」と呼ぶのか「便利なID」だと思うかはそれぞれ。パスポート番号の生涯利用はどこかで検討されたことがあるのだろうか、知りたいところである。

 昔、ある国に行った時に、入国したところで「パスポートを預かる。出国時に返す」と言われた。あまり頭が回っておらず言われたとおりに渡したが、中東などの危険地域であってもそのような話は聞いたことがない。むしろパスポートを渡してしまったら自分を証明する手段がなくなる。今から考えるとなんと危ないことをしたのかと。

 ところで、別に腹巻タイプのケースにいれて肌身離さずまではないが、国際線に乗るときだけはポケットに入れるようにしている。以前、緊急脱出を経験した人から聞いた話で、荷物は持てないので何か一つあるとすればパスポートだよと言われて以来、なんとなく。

 さて、今回のパスポートにはどのような旅をさせられるのだろう。

広州で自転車に乗る

広州でもMobikeにもOfoにも乗ってみる

広州に来ています。夕方、中心部へ食事のために移動した時に色々な道を少しだけ走ってきました。ところが広州は北京と上海と比べてシェアバイク率が低い気がします。十分に自転車は(そこらじゅうに)あります。MobikeとOfo、そしてbluegogoが少々。さらに僅かにいくつか。これは標準的な比率構成です。しかし、自転車に乗っている人が少ないのです。いないわけではなく「徒歩:自転車」の比率で自転車比率が低く、ものすごくざっくりいうと1パーセントを切っているように見えます。これが北京や上海だと定点観測すれば3~5パーセントぐらいにはなるのではないでしょうか。

ラウンドアバウトと地下道が自転車を分断している?

最初は単なる違和感でしたが、地下鉄の駅を一駅分、歩いて様子をみてみました。そこで気づいたことが、ラウンドアバウトと地下道の存在です。そして、例えば上海の浦東エリアのように「片側4車線でラウンドアバウトもあるが横断歩道もある」ではなく、歩行者が渡る手段は地下道しかなく(南北と東西のどちらかにだけ横断歩道があることも)、かつ太い通りには中央分離帯ががっちり。よって自転車が道を横切ったり大きな交差点を渡るこどか容易ではないのです。東西南北いくつか見て回りましたが同様でした。

百度地図で目的地に向けて走ろうとしたら逆方向を向き、ぐるっと回れというので、こいつなんで南に行くのに東を向くというのだよと思ったら、つまりそういうことだったわけです。

地下道に自転車を持ち込むこともできますがスムースな移動とは言えません。実際、少し様子をみていたらちょうど自転車から降りて地下道に向かう人がいました。アップダウンがきついわけでもなく、歩道と車道の幅の支障もありません。私が持った違和感が恒常的な状況だとすれば、こうしたことが要因の一つかもしれません。

広州の様子です

地下道に入るために自転車を降りる人。このあと立て続けに5人が同じように。

今日は細かく調べずに書いていますので、改めてデータや規則などを調べておきます。なお、広州は大変広く、私が見た場所はごく一部。少し離れれば様子は違うことでしょう。よって、ある部分を切り取ってみた一視点に過ぎないということをおことわりしておきます。

ソニーは韓国?

ところで、ホテルに荷物をおいて仕事に向かい歩いていたら、たまたま同じ方向に行きたいが道が渡れない(新港東路という道路を前に私も途方にくれていた)というエチオピア人だという男性に話しかけられました。

こちらも10分ぐらい歩く道のり一人じゃつまらないからと、なんで広州きてるんだという話や(ものすごい見た目からの偏見に聞こえるかもしれないけど、アフリカの人のようである時点で広州には商売で来ている人が特に多い)、エチオピアというのは何が特徴があるのかと聞いていたら、話の流れが日本に。そして一言。

「日本の会社もいろいろといっているよ。ソニー。あれ、ソニーは韓国か。 キヤノンとトヨタは日本だよね!と」。おぅ…。ソニーは日本だよ!、Samsungが韓国だよ!と訂正しましたが、遠く離れた場所から見れば日本も韓国も東の外れの小さな国。我々が遠く西の国を見ているのと変わりません。が、軽くショックでした。

今日の仕事の話はまた今度。広州に来て面白かったのは、中国ではどこでも街で色々なものを売っている人を見かけますが、ここではドローンを飛ばしながら売る人をたくさん見かけました。さすが! そして先ほどテレビで天気予報を見ていたら、また台風が香港・広東に向かってるようですよ…。

ABTCの発行枚数推移 – APECビジネストラベルカード

ABTCを持つ日本人が増えている

最近ABTCを持っている人が明らかに増えました。北京空港の入国審査レーンで今までは私以外に日本人は同じフライトで一人いるかいないかだったのが、毎回数人は見るようになり、さらに上海では多く見かけることがあります。そこでABTCの発行枚数の推移を調べてみることにしました。

なお、このblogへの流入ワードの上位に「ABTC」があります。さらに、いつの頃からかABTCと検索するとGoogleが私のblog画像を検索結果に表示されるようになったのですが、これが25キロ近く太っていたときの写真であり、毎回検索する度になんともいえない思いであります。中国の入国審査でパスポート写真の違いに「ふふっ」と笑われることもあれば「瘦了吗?」といわれることもありましたが、パスポートが期限前にページ不足となり、めでたく今と同じ顔になりました。

入出国審査の時間が短縮できるABTC(APECビジネストラベルカード)

発行枚数情報の調べ方

外務省に電話やメールをするという方法もありますが、このような質問に答えていただくのに手間をかけていただくことはさすがにと考え、公開情報をあたることにします。そう、たいていの情報は探せば公開されています。宮内庁の御所のネットワーク構成でさえPDFで拾われる時代です。(あれはさすがに非公開にしてほしかった)

各省は予算に対して行政事業レビューをしていて、事業予算に対して執行状況やその成果を公開しています。今回はこれをもとに調べることにしました。ABTCは、「APECを通じた経済関係の発展」との施策に含まれています。

外務省 行政事業レビュー

単年度のレビューシートでは過去5年分のデータしか拾えないため、2017年度の予測も含め過去10年分の数字を整理してみました。

10年で7倍の発行枚数に

整理してみたところ驚きの伸びです。10年で約7倍です(1,100枚→7,300枚)。

ABTC

ABTCの発行枚数を年度毎に整理しました

なお、累計発行枚数は累計3万枚とされていますが、ABTCの有効期間が5年であることと(ただし昨年までは3年)、そもそもパスポート更新によりABTCは再申請の必要があるため、ざっくり計算すると現時点での有効枚数は15,000枚前後なのではないかと推測します。

一方、ABTCを発行する他の国・地域による日本への承認業務は過去52万8千件あるとのことです。日本の累計3万枚と比べて相当多く、ひょっとするといずれかの国・地域に偏りがある可能性もあります(たとえば中国も発行国ですが、発行要件が厳しく、いまだに中国の人で使っている人を見たことはありません)。これはこれでいつか調べてみることにします。

非常勤職員3名の方で申請受付・審査をされている

同じく行政事業レビューによれば、途中までは非常勤職員2名で対応されていたようですが、直近は3名で対応されているようです。一日平均35件程度の申請と、あわせておそらく相当数の海外からの承認業務があると考えると、クラクラきます。ご迷惑をかけないようにしたいと思います。皆さん、申請の際には書類に不備のないように。

カンボジアに和牛を輸出している地域(税関)はどこか

カンボジアに和牛を輸出している地域

日本の冷凍和牛の輸出先第1位が5年連続カンボジアであるわけですが、2017年も順調にその傾向がみられます。さて、その冷凍和牛は日本のどの地域から輸出されているものが多いのでしょう。ということで、貿易統計で楽しく調べてみることにしました。

なお、なぜカンボジアが冷凍和牛の輸出先第1位なのかについてはこのblogでは触れません。検索すると答えと方法がたくさん見つかりますのでご参照ください。上海に行くと美味しい和牛(オーストラリア産のWagyuではありません)が食べられますが、中国は日本から2001年以降輸入はしていないことになっています。

わが国の税関の管轄は9つに分かれている

東京税関、横浜税関、といったように、日本の税関は9つのエリアで管轄が分かれています。このうち東京税関の管内には羽田空港や成田空港の支署などがある東京エリアだけでなく、やや離れた場所としては新潟も範囲に入っています。

今回の目的は、9つの税関の管轄のうち、いったいどこの税関を通じて「カンボジアの人がほぼ食べているわけではないと分かっているのに冷凍和牛が輸出されているのか」を知りたいというものです。厳密には税関と輸出する者の位置関係に正確な意味はありませんが、どこに輸出するためのものが集まってきているかは分かります。さすがに、例えば九州の牛をわざわざ横浜まで運んで輸出することが多いとは考えにくいためです。

なお門司税関では「和牛輸出第一位ワーイ」(注:筆者に聞こえた声)という特集が昨年12月に出されています。畜産王国九州です。胸を張っていただいてよいと思います。なんといっても日本のほぼ半分の牛肉は門司税関管内から輸出されているからです。そして、冷凍和牛ではなく冷蔵和牛にカンボジアルートはありません。概ね仕向地が本当のfinal destinationだと考えてよいはずです。香港やアメリカで美味しく食していただいているものと思います。
牛肉の輸出 – 門司税関の 2015 年輸出数量、金額過去最高 -シェア全国第1位

冷凍和牛とカンボジアに絞る

しかし門司税関の上のPDFは冷凍和牛と冷蔵和牛を分けていません。ここでは肉製品の貿易に係られている方であればお分かりいただけるだろうと思いますが、0201と0202の合算をされています。カンボジアに行っているのは冷凍品です。冷蔵品はさすがにドンブラコとタイに渡ってさらに中国に行くということはありませんし、あったとしても私は申し訳ありませんが食べません。

ということで、0202と、120、つまりカンボジアの組み合わせを調べたくなったわけです。なお120はカンボジアの国コードです。

実際には検索機能を使いますが、このようにCSVデータから確認することもできます。

貿易統計のCSV

貿易統計のCSVとニラメッコ。

まずは今年の状況を確認する

それでは、冷凍和牛の2017年度の状況について確認しましょう。

ちょうど6月度までは確定も出てきており第一四半期の状況がわかります。よしよし、今年度も出だしからカンボジアルートが好調だぞ(謎)、とわかります。金額ベースで見るとこれを単純に4倍すると昨年度を超しそうです。普段ならばきれいに整形するのですがExcelからのキャプチャだとモロワカリの手抜き具合、お許しください。

冷凍和牛の輸出金額と主要相手国。カンボジアが引き続き1位です

冷凍和牛の輸出金額と主要相手国。カンボジアが引き続き1位です

どの手段で輸出されているのか

貿易統計では「航空貨物」「海上コンテナ貨物」のいずれで輸出されているかが分かります。運送形態別といいます。ただし、郵便や海上バラ積み貨物で輸出されているものについては検索できませんので、まれに総額と合わない品物に出くわすことがあります。ま、牛肉でこれに出くわすことはありません。

貿易統計検索ページ
運送形態別品別国別表

結論はあまりにも簡単ですが、海上コンテナ貨物でしか輸出されていませんでした(過去の統計をさかのぼっても)。これは、カンボジアに日本からの直接の航空貨物便が飛んでいないからということではなく、経由や積み替えであってもいいわけですが、そもそも船でしか運ばれていないということになります。

運送形態別の冷凍和牛の輸出状況(2017年1-6月)

海上コンテナ輸送による冷凍和牛の輸出状況(2017年1-6月)

いよいよ税関別の状況に。

それでは、本日のお題である「カンボジアにはどの税関から和牛が輸出されているのか」を調べましょう。玄人さん向けにはCSVデータを使う方法もありますが、ここでは初心者コースということで検索ページを使います。既に品目コードが0202から始まることがわかっています。カンボジアは120ですね。

なお、0202が冷凍牛肉だよねというような輸出統計品目表については 財務省 輸出統計品目表
を使っても便利ではありますが、私は日本関税協会が提供されているweb輸出統計品目表をブックマークしています。

それでは検索しましょう。税関別で複数の月にまたがって検索する場合には「税関別品別国別表」ですが、税関別・国別・品目別で検索する場合には「統計品別国別税関一覧表」を用います。ここでは後者の「統計品別国別税関一覧表」で検索した結果を表示しました。

結果は、第1位が横浜。単価が高いのは神戸

引っ張りましたが、ようやく結果です。2017年度第一四半期(4-6月)の状況は以下のとおりです。

2017年4-6月度のカンボジアへの冷凍和牛輸出の状況
第1位横浜本関、第2位門司の下関税関支署、第3位同じく門司の博多税関支署、最後に神戸。なお2017年1-3月を絞るとと東京からわずかに輸出されていましたが4月以降の実績はゼロです。

ここまでくると、どの地域のお肉なのかが分かる気がしますが、神戸は本当に少なそうです。ただ、量が少ないのも起因しているでしょうが、1キログラムあたりの単価は神戸がトップ。高いお肉なんでしょう。参考までに、2016年1月から12月においても第1位横浜(192トン)、第2位下関(122トン)、第3位博多(36トン)は変わりませんでした。

また、2016年までは統計で冷凍和牛について枝肉・半丸枝肉以外のかた、うで、もも、など骨付きでない肉とが区別はされていませんでした。今年からはこれらが区別されていますが、その中でも輸出量の大半は枝肉・半丸枝肉が占めています。仮にすべてが枝肉だったとするとおよそ400-500キログラム程度。ここから脱骨などをしていくと半分ぐらいになります。どこかの記事で枝肉の単価で計算していた人がいましたが、グラムあたりの比較をするならば枝肉で割り算しないほうがいいと思います。

仕向地は「最終目的地」のはず

最後に、牛肉を大事に育て出荷されている皆さんや、本当にカンボジアの中で流通させるために尽力されていらっしゃる方の努力は十二分に理解しています。私個人としては、ここまで実状は奥深いものがあるのに、長期にわたって迂回ルートが取られている現状は好ましくないものと考えています。中国が一日も早く日本からの牛肉輸入を解禁してくれることを期待しています。

仕向地というのは「輸出貨物がその取引において最終的に仕向けられる国」です。いいですか。最終的に、です。それでは、カンボジアの人が本当にたくさん和牛を食べて頂ける日が早く来ること、および冷凍和牛の統計に「105番」(中華人民共和国)がまた出てくる日が早く来ることを期待して、本日はこのあたりで。書いててお腹減りました。

オピニオン: 資格外活動許可下における複数のアルバイト先での時間管理

複数のアルバイト先での28時間ルール超過時の企業側の責任

今回は、入管法第19条での「28時間ルール」に関連し、外国人留学生が複数のアルバイト先で勤務する際の勤務時間超過問題について、法が雇用主の責任を求めるならば何らか雇用主に対して把握方法を提供するべきではないかとの点を照準とした一意見を書くことにします。不法就労助長罪についてはオーバーステイや風俗業絡みの判例が中心で、今回指摘したい「資格外活動許可を得ている外国人留学生が2以上のアルバイト先で勤務していたが、この勤務時間は合計すると恒常的に28時間を超過していた」ことにつき、これだけを取り上げて雇用主側の責任を追及した判例は見当たりません。(収録されていないだけだというご指摘があればぜひお願いいたします。あて先は kentaro [at] iemoto.com です。)

しかしわが国の実態はまさにこれです。28時間ルールを十分に理解している雇用主・外国人留学生が多くいることも承知していますが、他方でアルバイトの掛け持ちによって28時間ルールがうやむやになっているケースも多くあります。なぜならば、外国人留学生本人から勤務時間について積極的に申告を得ない限り、雇用主側に把握する手段が存在しないためです。また雇用主側が真実性を確認する手段も存在しません。

外国人留学生をさらに増やしていきたいとする30万人計画の存在(あの計画の着地と評価をどうするかは別としても)と同時に、働き手として一定程度外国人留学生に依存している現場もある中、28時間ルールの本質である「留学は勉学が本分」という趣旨については何ら反対しません。また不法就労助長罪の存在に対する批判もありません。ましてや、複数先での28時間ルールの超過により雇用主側が摘発される事案は無いのだから「ルールは無視してよい」というつもりもありません。一方で、国費留学生は原則NGがあるため別だとしても、留学での生計を維持するためにアルバイトをする必要があったり、アルバイトをすること自体で日本で学ぶことにプラスになったりする点も当然あります。よって私自身は資格外活動許可の制度をもつわが国の制度自体に対しては評価をしています。

ところが、いざアルバイトで働く際、この28時間は複数先での合算であることについての理解は高いといえません。働き始める際にはパスポートや資格外活動許可証の確認、本人からの(就業開始時に他のアルバイト先の有無について)聞き取りをするにしても、それが適切であったと後から立証するのは容易ではありませんし、勤務時間など変動して当然。よって、雇用主側に対して勤務時間を登録・照会する何らかの手段を用意するなど、雇用主側の「努力」に依存しない手段の提供を期待するものです。

なお、これらの目的は「正しく日本でアルバイトをする外国人留学生」と「正しく外国人留学生を雇う雇用主」がバカを見ないようにすることである点は、当然ながらも添えておきます。

入管法における資格外活動許可

入管法は、外国人留学生が日本でアルバイト等を行う場合に資格外活動許可を得ることを義務付け、さらに資格外活動は原則として週28時間以内(いわゆる夏休み等は1日8時間以内)としています(入管法第19条)。この際、既出のとおり勤務時間の制限は複数先で合算です。

どのように一般に周知されているかについて調べてみると、例えばここ東京都では「外国人在留マニュアル」が発行されており、英語以外に11の言語で同一の内容が作られています。そしてこのマニュアルには「合算ですよ」と明文化されています。

東京都の発行する「外国人在留マニュアル」

週28時間の制限は合算であることが明記されているものの…。

ただし、雇用主を指定する個別許可として「(1)活動の目的が本邦留学中の学費等の必要経費を補うものであること,(2)申請に係る活動が語学教師,通訳,翻訳,家庭教師等,申請者の専攻科目と密接な関係のある職種又は社会通念上学生が通常行っているアルバイトの範囲内にある職種であること」(国家戦略特区等提案検討要請回答より)が認められる場合には28時間ルールを超える許可を行うことがあるとしています。すなわち、全てが28時間ルールであるわけではありません。もっとも、一般的に企業や店舗等でのアルバイトの場合には包括許可での28時間ルール以外を見ることはほぼないでしょう。

28時間を超過しているかはどのように把握できるのか

ところが、冒頭に書いたように、雇用主は「複数でアルバイトをしているのか」「その合計が週28時間を超過してるいのか」を把握する手段がありません。また勤務時間の実態を入管等に報告する義務もありません。よって入管に電話して「この人は複数でアルバイトをしていますか」と聞いても(おそらく)わかりません。

以前の私のblogでも、本人の申告以外に28時間オーバーを把握する手段が無いことを書きました。また、今まで17-18年ほど外国籍従業員と一緒に働きた中では正社員以外にアルバイト・インターンの存在も多くいましたが、一度も28時間ルールについて「超えています」と言われたことはありませんでした。(違法なブローカーの存在を感じさせるオーバーステイ

本人に「28時間を超えることはできませんよ。ただし夏休み等は別です。」「複数での合計ですよ。」という注意はできます。します。しかし、継続的にフォローすることは困難ですし、真実性を確認する方法はありません。毎月、報させますか・しますか、という話です。

外国人の日本での就労時の報告制度

では、外国人が日本で就労する場合にはどのような報告制度があるのでしょうか。実は大きく分けて二つあります。一つは入管法による届出、もう一つは雇用対策法による届出です。わかり難いのですが、ハローワークに届出が義務付けられている者、すなわち企業等の事業主は雇用対策法での外国人雇用状況届出を行えということになっています。一方、その対象ではない、たとえば学術機関等での雇用の場合には入管に届け出ろということになっています。よってどちらか、です。

努力義務である入管法の受入・企業側の登録

このうち入管法では、中長期在留者の関係先(受け入れた企業などの雇用主。労働関係に限らない。)は外国人の受入れの開始・終了時点で届け出を行うこととされています(入管法第19条の16及び17)。ただし雇用主に対しては努力義務、です。また資格外活動許可の包括許可によるアルバイト先については対象ではありません。アルバイトについてはハローワークで届け出ることになっているからです(建てつけ上)。

なお2013年から「入国管理局電子届出システム」が稼動しており紙での報告ではなくなっていますが、届出されている数と対象の在留許可数の差はどの程度なのかを知りたいところです。この統計は見当たりませんでした。

雇用対策法での外国人雇用状況届出は義務化されているが…

一方、厚生労働省所管の雇用対策法では、2007年10月の改正で外国人雇用状況の届出が義務化されています。こちらは義務で罰則規定も存在します。全ての雇用主に対して採用時と退職時に報告しろということになっており、留学生が行うアルバイトも対象であると明確化されています。正採用の場合には雇用保険の被保険者とることでいずれにしても把握ができるわけですが、雇用保険の被保険者とならない外国人の場合に対しては外国人雇用状況届出書を所轄のハローワークに出すことが義務付けられているのです(雇用対策法第28条第1項及び附則第2条第1項)。

法務省と厚生労働省とそれぞれ所管が異なりますが、とにかく企業等の事業主の場合にはまずは雇用対策法での届出を行え、これは行わなければ罰則があるぞ、とし、対象ではない職種の人には入管の仕組みで届出をしてね、しかしこちらは努力義務、ということになります。もっとも、全ての事業主が届け出ているかは不明です。特に正採用ではなく、かつ雇用保険の対象ではない場合、相当数が抜け落ちている可能性があります。在留許可数との乖離は改めて調べてみることにします。

いずれにしても、雇用保険の被保険者とならないケースでどの程度届出がなされているのでしょうか。

逸脱方法はいくらでもある中、どうすればよいのか

わが国における留学生に対する「週28時間ルール」は、たとえばアメリカへの留学生の状況からするとルール上は緩めであるともいえます。包括許可ですから禁止業種以外はどこでも働くことができるわけです。

しかしその厳しいアメリカでさえも、あるいはその他の国であったとしても、さらに日本であったとしても、逸脱方法はいくらでも存在します。たとえば日本では、現金手渡し、単価書き換え(8時間働いても短く働いたことにし、しかし時間給を上げる)、複数先での勤務を意図的に把握しない、などです。似たような話はどこの国にいってもあります。アメリカでの留学中のアルバイトについて検索してみると、キャンパス内の20時間以内の労働(日本でも大学でTA・RA・SAをすることは除外)を紹介するページもあるものの、似たようにスレスレ or アウトの話を紹介しているページも多く見つかります。

そのような中でたとえば雇用主に「外国人のアルバイトを雇ったらパスポート情報と一ヶ月あたりの勤務時間を申告してね」とシステム化をしたところで、誰がまじめにやるのでしょう。コンプライアンスにうるさい日本の大企業であったとしても、フランチャイズの先の店舗の状況を細かく把握できているとは思えません。かといって、雇用主側の管理義務を無くすわけにはいきません。おそらく、入管法第19条の企業側のジレンマはこのあたりがポイントです。

結局、このままではザルになる。

さて、そろそろ結論に行き着く必要があります。

ここまで見た中では、届出義務は「その人が働きはじめたか、辞めたか」です。勤務時間は管理されていません。ましてやアルバイトの場合には雇用保険との兼ね合いでさらに不透明です。雇用主からすれば不法就労助長罪への抵触を回避するために旅券や在留資格、在留カードの確認などを怠らないようにし、かつ「あなたは複数先で合計28時間以上は働くことはできませんよ」と伝えればここまでで終わりです。仮に知ってしまった場合にはいずれかの勤務時間を減らすよう努力すべきですが、雇用主が出来ることは現実的にここまでです。

冒頭に書いたように、ただでさえアルバイトの働き手確保も厳しい時代です。28時間枠を拡大するのは「勉学が本分」という点から外れるため無いとして、逆に合計28時間ルールを1雇用主あたり21時間ルール(7h x 3days)とし、その管理を厳格化するのはどうかとの意見も近くではありましたが私は反対です。そうすると21時間を超えて働きたい留学生は掛け持ちをするだけです。

他方で、「外国人を雇ったら毎月勤務時間を報告せよ。報告していない状況を見つけたらペナルティ(次の雇用ができなくなるなど)を課す。臨検も頻繁にする。」といった厳格型管理手法も行政効率は高くありません。あまり言いたくはありませんが、国全体としてもこの労働市場環境で「合計週28時間ルール」の厳格運用が果たして出来るのかが疑問です。働き方改革では労働時間の話がここまで注目されましたが、「留学生」の「働き方」についてはメスが入る様相はないままです

在留カードにデータは書き込めるのか

ところで、外国籍の方が日本に3ヶ月以上滞在する場合には必ず在留カードを持っていることになっています。そしてこの在留カードのICチップに含まれているデータ仕様は公開されています。従って包括許可の有無以外に包括許可による雇用の有無について在留カードに書き込むことが出来れば雇用主の有無や雇用主情報を持つことができ、活用できる可能性があるのではないかと考えました。

よってデータの仕様を確認しましたが、包括許可または個別許可の有無については含まれているものの、現に雇用されているかどうかの情報を格納するファイル構造は確認出来ませんでした。ICに載っている情報の合計バイト数は手元で計算すると12,070byteのため、データの空き容量からすれば技術的には不可能ではなさそうです。もっとも、読み取りは出来ても書き込みを一般に何らか許可させられるか、そしてカードリーダーではなくライターを広く配布できるかというとこの案はあまり現実的ではありません。カード単体で対応することは今のところは難しそうです。

在留カード等読取り仕様書(一般公開用)

私の提案は「他の雇用主の有無を照会できる」システム

この上で、私個人の意見としては、(統計上およそ21万人いるとされる)資格外活動許可によるアルバイトに対しては、在留カードの番号をもとにして雇用主が外国人雇用状況届出書により雇入れ・離職について届けた情報を第三者の雇用主が照会できる仕組みを設けるべきであると考えています。在留カードの番号の検索によって他の雇用主が重なっていないかを把握できればよいでしょう(システム上の表示はありなしでよい)。そして雇用保険の被保険者であれば除外しても差し支えないわけですから、対象者はこのように限定することができます。雇用対策法の改正等によらずとも実現できる可能性があると考えます。

毎月勤務時間を登録しろとすることは現実的ではありません。しかし、他の雇用主が、目の前のアルバイト候補者を現に雇っているかどうかが把握できるだけでも、合計週28時間ルールに抵触する可能性があるかを一次的に確認することができます。今はこれが無いために本人の自己申告に拠っているのです。複数でアルバイトをしていてもよいのです。ただし、複数でアルバイトをしている場合には雇用主は注意を促すことができ、また行政側は届出前の照会の有無についても把握できます。個人情報保護の観点や趣旨からすれば、姓名等についての情報を確認する必要はなく(旅券でよい)、あくまで他の雇用主の有無に絞ることにこの提案の意義があります。

私の提案は以下の図のとおりです。図では簡略化するため2社めで照会していますが、そもそも外国人留学生のアルバイトを採用する場合には照会することを義務付け、資格外活動許可の有効性の確認と共に、他の雇用主の有無を確認ができるだけでも「うちの会社だけで週28時間を使い切るわけではない可能性があるから注意しなければいけないな」となると考えます。

資格外活動許可の照会システムの私案です。

資格外活動許可の照会システム(私案)。番号入力で現雇用先の有無が確認できるだけでも注意喚起の効果がある可能性。

週28時間ルールでさえ守っていない雇用主がいるのに届出などするか! との批判があれば、それはそのとおりです。しかし、正しく雇いたいと考えている企業にとって何ら手段が用意されないままであることは困ります。雇用主が責任を負うべき体制にするためにも、留学生のアルバイトの働き方を守るためにも、また留学の実態がない留学生に対して適切な対応をとるためにも、です。不透明な届出は検査すればよく、あくまで性善説によるべきで、働く現場が容易に届けられる仕組みを確保することが求められます。